【4月9日 AFP】差し迫る英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)期限。アジア各地の旧英植民地は、困惑、無関心、気晴らし、あるいは他人の不幸を喜ぶ気分が入り混じった状態でその過程を眺めている。

 英政府は長年、自国による植民地統治は秩序と安定をもたらし、繁栄を分かち合ってきたとして、大英帝国による征服を正当化していた。英国が植民地支配から撤退した後に問題を抱える国々が新たに生まれ、それらの国との歴史的禍根をぬぐえていない今日でも、その主張は変わらない。

 ところが今、英国は自分が種をまいた混乱と国内分裂、さらに国際的孤立と今後何年にもわたる経済的苦境の可能性に直面している。特に今月12日に「合意なき離脱」に至った場合はなおさらだ。

「香港と呼ばれる英国の植民地で生まれ育った私は、英国人はとても思慮深い人々だと思っていた」と話すクラウディア・モー(Claudia Mo)氏(62)は、香港民主派の議員だ。「けれど元被植民地の一員としてブレグジットの過程を見ていると、これはほとんど茶番だ。悲しくなるほどおかしく滑稽だ。現在の状況にどうして、どうやって至ってしまったのか。外部の人間にとっては、ほとんど考えられない事態だ」とモー氏はAFPに語った。

 インドでは多くの人がブレグジットについて「大国として力を振るっていた英国の急激な衰退」の最終章だと捉えていると、同国OPジンダル・グローバル大学(O.P. Jindal Global University)国際関係学部(Jindal School of International Affairs)の学部長、スリーラム・チャウリア(Sreeram Chaulia)氏はいう。「彼らはもはや見上げるべき金字塔ではない」「沈みかけている船からは誰もが逃げたがるものだと、われわれは感じている」。インド経済は今年、英国を追い越す見通しだ。

 一方、「ここスリランカでは国内政治の機能不全によって皆が消耗してしまい、ブレグジットやさらに広範な民主主義全般に関する話題は、日常生活とはまるでかけ離れている」と語るのは、現地英字紙「サンデー・オブザーバー(Sunday Observer)」のダリシャ・バスティアンス(Dharisha Bastians)編集長だ。

 民族主義者のスリランカ国会議員、ウダヤ・ガマンピラ(Udaya Gammanpila)氏は、スリランカ世論がブレグジットに関心を示さないのは良い傾向だと述べ、「わが国はもはや英国の政治に気を取られてはいない。徐々にわれわれが持つ被植民地気質を脱しているのだ」と語った。

 シンガポールで経済を学ぶ学生、リナス・イェオ(Linus Yeo)さんは、ブレグジットをポジティブに捉えようとしている。「英国で休暇を過ごすには最適のタイミングだと思う」「英通貨ポンドがたぶん急落するだろうから」

 インド・ニューデリーでフリーランス・フォトグラファーとして活動するタンメイ(Tanmay)氏は、ブレグジットの支持者は忍耐について、インドを見習えるだろうと冗談を言った。「英国のEU離脱に時間がかかっているのは当然だ。英国はインドから出ていくのに何年もかかったからね」 (c)AFP/Jerome Taylor with AFP reporters