【4月4日 AFP】フランスの首都パリで先週末に行われたアルジェリアのアブデルアジズ・ブーテフリカ(Abdelaziz Bouteflika)大統領に対する抗議デモで、心と体の性別が一致しないトランスジェンダー(性別越境者)の女性が暴行ややじを受ける事件があり、活動家や政治家から怒りの声が上がっている。捜査当局は事件の捜査を開始した。

 事件は先月31日、パリ中心部のレピュブリック広場(Place de la Republique)で発生。ツイッター(Twitter)に投稿され、これまでに150万回以上再生された当時の映像には、デモが行われていた同広場で、しま模様のシャツとスカート姿の女性が地下鉄駅から出ようとしたところ、アルジェリア系のデモ参加者らに取り囲まれる様子が捉えられている。

 映像では、周囲からやじを浴びせられる女性に1人の男が近づき、髪を触ってくしゃくしゃにすると、アラビア語でからかいの言葉を浴びせた。女性が群衆の間を通り抜けようとしたところ、男1人が女性に何度も殴り掛かり、さらに別の男も女性の方向に蹴りを入れた。アルジェリアの旗を肩にかけた若い女性が仲裁を試みるようなそぶりを見せた後、地下鉄の警備員らが現場にかけつけ、女性を連れ出した。

 被害者のジュリアさん(31)はテレビ局BFMのインタビューに対し、3人の男に止められたと語った。「3人のうちの1人は私を見て、『お前は男だ。どこにも行かせない。通さない』と言って、私の胸に手を置いた」といい、もう1人からは下品な身振りを見せられ、他の2人はその間「笑いながら私にビールをかけてきた」という。ジュリアさんの話が映像の事件についてなのか、それ以前に起きたことについてなのかは不明。

 司法筋によると、仏検察は「性的指向と性自認に基づいた暴力」に対する捜査を開始。1人が身柄を拘束されたが、後に釈放された。

 性的少数者(LGBT)支援団体「SOSオモフォビー(SOS Homophobie)」の昨年の報告書によると、フランスでは2017年、トランスジェンダーの人々に対する襲撃事件が前年比54%増の186件となった。またパリでは同性愛者が路上で暴行を受ける事件がここ数か月で複数件発生している。(c)AFP/Clare BYRNE