【4月13日 AFP】ケーシー・ウォン(Kacey Wong)さん(49)は、明るい日差しが降り注ぐ香港のスタジオで、共産党を象徴する赤で塗られた鉄格子越しにおりの外を見つめる。この作品でウォンさんは、強引に自らの芸術的野望を満たそうとする中国政府となんとか折り合いを付けようとしている香港を批判している。

 香港は今や、高級画廊や「アート・バーゼル(Art Basel)」といった華やかなアートフェアで知られているが、さらに数億円規模の新たな公共アートスペースを複数建設することで、文化都市に生まれ変わろうとしている。

 だが、地元のアーティストらは、中国政府の影響力が拡大し、創造性が抑圧され、創世期の地元の草の根アートが脅威にさらされると警告する。

「政府が支援するアート施設はすべて…もう安全とは言えないと思う」「越えてはならない一線が見えないし、常に変わっている」とウォンさんはAFPに語った。

 香港では、中国政府に徐々に浸食されているという警戒感が広がっている。昨年には、中国の風刺漫画家バーディユツァオ(Badiucao)氏のイベントが中止された。主催者は中国当局から圧力を受けたとしている。

 そのわずか1週間後には、改修工事を終えたばかりのアートスペース「大館(Tai Kwun)」で行われる予定だった反体制派の作家、馬建(Ma Jian)氏のトークショーも、最後の最後にやはり開催されることになったが、いったんは中止が発表された。

 出版の自由も被害を受けている。共産党指導部のゴシップ本を扱っていた書店の関係者5人が2015年に行方不明になったが、中国本土で身柄を拘束されていることが明らかになっている。