【4月1日 AFP】ウクライナ大統領選の第1回投票が3月31日に行われ、現職のペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko)大統領(53)とコメディー俳優のウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)氏(41)が、3週間後の決選投票に進む見通しとなった。

 出口調査の結果によると、第1回投票でのゼレンスキー氏の得票率は30%以上で、約18%のポロシェンコ氏を大きく引き離している。

■コメディアン、ゼレンスキー氏

 ゼレンスキー氏はすでにウクライナの大統領に選ばれている──人気テレビ番組「市民の召使い(Servant of the People)」の中でのことだ。

 今回の大統領選では当初、ゼレンスキー氏が勝つ見込みはないとみられていた。だが、既存の政治階級に不満を持つ人々の支持を得て、主力候補となった。

 支持者らはゼレンスキー氏が政界に新しい風を吹き込むと考えているが、専門家らは同氏のマニフェストは曖昧で、内戦状態が続く国家の命運を政治の初心者に懸けるべきではないと指摘する。

 ウクライナ中部の工業都市クリビーリーフ(Krivy Rig)の出身で2児の父。法律の学位を取得しながらもステージでのキャリアを選んだゼレンスキー氏は、俳優から米大統領になったロナルド・レーガン(Ronald Reagan)氏と比較されることもある。政策を訴える手段としては、記者会見よりもソーシャルメディアの動画を好んでいる。

 ゼレンスキー氏は、物議を醸しているウクライナのオリガルヒ(新興財閥)、イーゴリ・コロモイスキー(Igor Kolomoysky)氏の「手先」だとの批判も出ているが、ゼレンスキー氏はコロモイスキー氏との政治的結びつきを否定している。

 またウクライナのテレビ局は今年1月の調査報道で、ゼレンスキー氏とロシアとの商取引関係を指摘している。報道を受けてゼレンスキー氏は、ロシア企業が所有するキプロス企業の株式を保有していることを認め、これを売却することを誓った。

 ゼレンスキー氏は公約として、2015年にウクライナ政府と対立する同国東部の親ロシア派の間で和平に向けて交わされた「ミンスク合意」の履行を進めると述べている。だが、ゼレンスキー氏がロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領に立ち向かうことができるのか疑問だとの指摘もある。一方でゼレンスキー氏は、ポロシェンコ政権が進める欧米との協調路線を維持すると表明している。