【3月27日 AFP】ケニア辺境の村にある中学校で数学と物理を教える教師が、今年の「グローバル・ティーチャー賞(Global Teacher Prize)」に選ばれ、賞金100万ドル(約1億1000万円)を獲得した。賞の主催団体「バーキー財団(Varkey Foundation)」が発表した。

 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(Dubai)を拠点とするバーキー財団が主催する授賞式は今年で5度目。同地で23日に行われた式では、ハリウッド(Hollywood)スターの俳優ヒュー・ジャックマン(Hugh Jackman)さんが司会を務めた。

 今回受賞したのは、ケニア辺境のプワニ(Pwani)村の学校で教壇に立つ、ピーター・タビチ(Peter Tabichi)氏(36)。

 同財団は、タビチ氏が月収の8割を貧しい生徒たちのために提供しており、その「献身とハードワーク、生徒の才能に対する熱い信念」を称賛。こうしたものが結び付き、「ケニア辺境の地方部にある貧しい学校を、科学の全国大会で同国の最上位校に挑戦させ、勝利に導いた」と評価した。

 世界各地からの候補者のうち、最終選考に残った9人の中から選ばれたタビチ氏は、「アフリカでは毎日、私たちは新しいページ、新しい章をめくっています…この賞は私ではなく、この偉大な大陸にいる若者たちを認めているのです。私はただ、生徒たちが成し遂げてきたことのゆえに、ここにいるのです」とスピーチ。「この賞は若者たちにチャンスを与えます。世界に向けて、彼らは何でもできると伝えてくれているのです」と述べた。

 タビチ氏の学校がある地域は、リフトバレー(Rift Valley)の半乾燥地帯に位置し、干ばつや飢饉(ききん)が頻繁に発生している。

 バーキー財団によると、学校の生徒約95%が「貧しい家庭の出身で、うち3分の1が孤児や一人親家庭の子どもであり、多くが家で食事にありつけず」、「薬物乱用や10代での妊娠、早期退学、早婚、自殺が珍しくない」という。

 一部の生徒は7キロの道のりを歩いて通学しなければらならず、雨期には通行不能になることもある。

 学校では、教師1人が抱える生徒数は58人で、生徒用のデスクトップ型パソコンは1台しかなく、インターネット環境も貧弱だが、それにもかかわらずタビチ氏は、生徒たちのために8割の授業で情報通信技術を取り入れているという。(c)AFP