【3月29日 CNS】中国・水泳の孫楊(Yang Sun、ソン・ヨウ)が24日、中国・青島市(Qingdao)で開催中の「2019全国水泳選手権大会400メートル自由形で、3分43秒73という今シーズン世界最速のタイムを出し、金メダルを獲得した。

 今年の同大会は、韓国・光州(Gwangju)で開催される世界水泳選手権(FINA World Championships)の出場選手を選考する大会で、孫にとっては冬季訓練の成果を検証する機会でもあった。

 孫は昆明市(Kunming)での高地合宿に続き、シンガポールでの5週間の海外トレーニングもこなし、身体能力も技術も完璧な状態に仕上げていた。だが、激しい訓練だったため、27歳の孫にとっては若干きついところもあった。そのため、蓄積した疲労がこの大会の成績に影響を及ぼすかもしれないと懸念されていた。

 孫について朱志根(Zhu Zhigen)コーチは試合前、目標を達成すればそれでいいと控えめな発言をし、「楽にやればいい。毎回記録を伸ばす必要はない」と語っていた。

 孫は24日午前の予選を楽々と1位通過したが、その泳ぎは自身が満足できるものではなかった。しかし、午後の調整を経てベストコンディションを取り戻した。

 決勝では、孫はスタートの着水時から常に先頭を保った。山東省(Shandong)の季新傑(Xinjie Ji)が急追するが届かず、孫が金メダルを手中に収めた。

 自身のタイムを確認した孫はいつも通り、天に向かって雄たけびを上げ、水面をたたいて喜びを表した。

 孫の実力であれば、全国大会で金メダルを取るのは容易なことと言えるが、シーズン初戦のこの勝利はとって特別な意義があった。「体の調子が完全でない時に世界記録を出せたのがとても良かった。光州の世界水泳でも中国チームに貢献できる」と話した。

 競泳中国チームのキャプテンを務める孫の努力は、言葉の上だけではない。今大会、当初は200メートル自由形、400メートル自由形、800メートル自由形の3種目だけに出場登録をしていた。だが開催直前に1500メートル自由形への参加も決め、中長距離の自由形全種目に出場することにした。

 4種目への出場は、孫にとって新たなことではなく、これまでも全国大会ではずっとそうしてきた。しかし年齢を重ね、運動選手としての体の回復速度が遅くなり、けがや病気が増えている。4種目出場は簡単なように見えても今の孫にとっては大きな挑戦なのだ。

 金メダルを取った後、孫は会場で涙を流したが、それは親友のケネス・トー(Kenneth To、杜敬謙)のための涙だった。トーは米国でのトレーニングの際に突然意識を失って倒れ、懸命の治療もむなしく命を落とした。

 予選終了後、孫は「今回は杜のために泳ぐ」と話し、金メダル獲得後にはプールサイドで哀悼の意を表した。記者のインタビューを受けた際には「選手はみな元気でいてほしい。それが何より大事だ」と話し、熱い涙を浮かべていた。(c)CNS/JCM/AFPBB News