【3月24日 AFP】フィギュアスケート世界選手権(ISU World Figure Skating Championships 2019)は23日、さいたまスーパーアリーナ(Saitama Super Arena)で男子フリースケーティング(FS)が行われ、驚異的な演技を披露したネイサン・チェン(Nathan Chen、米国)が羽生結弦(Yuzuru Hanyu)を抑えて大会連覇を果たした。

 前日のショートプログラム(SP)でも圧巻の滑りを見せたチェンは、先に滑った羽生が合計で世界最高点を記録したのにも動じず216.02点をマークし、合計323.42点ですぐさま羽生の記録を更新して優勝した。チェンは「夢のような気分。最高の大会になったし、これだけの大会にできたことを誇らしく思う」と話した。

 一方、平昌冬季五輪の金メダリストである羽生は、昨年12月の全日本選手権(Japan Figure Skating Championships 2018)欠場などにつながった足首のけがから今大会で復帰。SP3位からの巻き返しを図ったこの日は、いつも持ち歩いている「くまのプーさん(Winnie-the-Pooh)」のぬいぐるみを優しくつかむと、耳をつんざくような歓声の中氷上に立った。

 そしてコンビネーションジャンプも成功させて206.10点を獲得し、現行ルールでは初の300点超えとなる300.97点を記録すると、熱烈なファンが投げ込むぬいぐるみの雨の中、ガッツポーズをつくってジャッジの方へ力強い視線を投げた。

 しかし氷の血が流れるチェンは、難なく成功させた4回転、3回転のトーループのコンビネーションを含めて4本の4回転ジャンプを跳び、216.02点で羽生の得点を上回った。3回目の世界王者を逃した羽生は、悔しさを隠そうとせず「負けた! くそー」と言いながら控室へ向かい、途中でチェンのフリーが流れているモニターの前で立ち止まると、演技を見つめながら「かっこいい。あれじゃ勝てない」と続けた。

 その後、落ち着きを取り戻した羽生は「正直に言って、自分にとって負けは死も同然。ただ、きょうは実力不足を認めなければいけない」「フィギュアは2日間の結果で決まるが、今回は良い演技をそろえられなかった。望んでいた結果ではなかったが、彼のような選手がいるからこそ、もっと強くなって勝ちたい」と客観的に振り返った。

 米国のヴィンセント・ゾウ(Vincent Zhou)が優雅な演技で合計281.16点を獲得し、3位に入ったことで、男子では1996年大会以来久しぶりに米国選手2人が表彰台入りを果たした。平昌銀メダリストの宇野昌磨(Shoma Uno)は最初の4回転ジャンプ2本に失敗し、合計270.32点で4位だった。

 またアイスダンスのFSでは、フランスのガブリエラ・パパダキス(Gabriella Papadakis)/ギヨーム・シゼロン(Guillaume Cizeron)組が見事な滑りをみせ、大会連覇を果たした。

 仏カップルはFSで134.23点を記録し、合計点を世界最高となる222.65点として通算4度目の世界王者に輝いた。

 合計211.76点でロシアのヴィクトリヤ・シニツィナ(Victoria Sinitsina)/ニキータ・カツァラポフ(Nikita Katsalapov)組が2位、合計210.40点で米国のマディソン・ハベル(Madison Hubbell)/ザカリー・ダナヒュー(Zachary Donohue)組が3位に入った。(c)AFP/Alastair HIMMER