【3月22日 AFP】フィギュアスケート世界選手権(ISU World Figure Skating Championships 2019)は21日、さいたまスーパーアリーナ(Saitama Super Arena)で男子ショートプログラム(SP)が行われ、前回王者のネイサン・チェン(Nathan Chen、米国)が鮮烈な演技で羽生結弦(Yuzuru Hanyu)を上回り、首位に立った。

 昨年12月に行われた全日本フィギュアスケート選手権(Japan Figure Skating Championships 2018)の欠場を強いられた足首のけがから復帰したばかりの羽生は、ひざまずいて祈り、どこにでも持ち運んでいる「くまのプーさん(Winnie-the-Pooh)」のぬいぐるみを優しくつかむと、耳をつんざくような歓声の中氷上に立った。

 24歳の羽生は最初の4回転サルコーを失敗するも、4回転ルッツと3回転トーループの連続ジャンプや、高さ70センチという驚きのトリプルアクセルを成功させ、94.87点をマークした。羽生が力強い演技を見せると、熱狂的なファンから黄色いクマのぬいぐるみが次々に投げ込まれた。

 チェンは、4回転ルッツや4回転、3回転の連続トーループを成功させるなど完璧なスケーティングを披露するとガッツポーズを見せ、シーズンベストとなる107.40点を記録。2位のジェイソン・ブラウン(Jason Brown、米国)との差を10ポイント以上に離し、冬季五輪で二つの金メダルを獲得した羽生が3位となった。

 4回転ジャンプのないルーティーンを華麗にこなしたブラウンは、週末のフリースケーティング(FS)を前に羽生を上回る96.81点を記録したものの、チェンが最初の4回転ルッツを成功させると、そのスコアはSPで首位をキープするには十分とは言えないものになった。

 羽生とブラウンの隣に立った19歳のチェンは「この2人のおかげで、僕はスケーターとして成長できた」とコメントし、「良いことも悪いことも、過去に起きたことはそれで終わりというのを自分に言い聞かせるのが好き」と続けた。

 3度目の優勝を狙う羽生は言い訳をせず、FSでの挽回を約束した。

 汗をかきながらプーさんのぬいぐるみを手にした羽生は「集中できていなかった」と振り返り、以下のように話した。

「冒頭のジャンプのミスで焦ってしまい、その後は一生懸命になりすぎた。とにかく不完全燃焼なので、しっかりと燃焼しきれたと言えるような演技をしたい」「試合勘については経験値があるので問題ないと思っている。この悔しさはFSで晴らしたい」

 また、活気あふれる演技を見せた米国のヴィンセント・ゾウ(Vincent Zhou)が94.17点で4位、イタリアのマッテオ・リッツォ(Matteo Rizzo)が93.37点で5位、4回転フリップの着氷で転倒した宇野昌磨(Shoma Uno)は91.40点で6位となった。

 ペアのFSでは、中国の隋文静(Wenjing Sui)/韓聰(Cong Han)組がこの日トップとなる155.60点をマークし、合計234.84点で優勝を飾った。

 前日のSPで81.21点を記録し首位に立っていたロシアのエフゲニア・タラソワ(Evgenia Tarasova)/ウラジーミル・モロゾフ(Vladimir Morozov)組が合計228.47点で2位に、同胞のナタリア・ザビアコ(Natalia Zabiiako)/アレクサンドル・エンベルト(Alexander Enbert)組が合計217.98点で3位に入った。(c)AFP/Alastair HIMMER