【4月7日 AFP】サッカー大国を目指す中国。だがその志をくじきかねない危うい事態が起きている。正式なライセンスを持たない指導者や経歴を詐称した指導者、あるいは強欲な仲介業者らが、急成長している育成レベルや地域レベルのグラスルーツ(草の根)サッカーに群がっていると、業界関係者らが警告している。

 サッカーファンとして知られる習近平(Xi Jinping)国家主席にとって、サッカーは中国の「ソフトパワー」を示す手段の一つだ。その習主席の命の下、世界第2の経済大国・中国は、国内のサッカー環境の整備を進めている。その中心課題は、学校やクラブ、サッカースクールなどを通じて若年層のサッカー人口を増やすこと。中国教育省では、2025年までに全国5万校を「サッカー強化校」とする目標を掲げている。

 しかし、AFPの取材に応じた中国ユースサッカー界の関係者5人はこぞって、偽のライセンスで活動している指導者に会ったことがあると語った。海外から来た指導者だというだけで十分職にありつけると、関係者の多くは話す。

 かつて中国代表選手としてプレーし、現在は中国スーパーリーグ(Chinese Super League)・上海上港(Shanghai SIPG)のアシスタントコーチを務める謝暉(Xie Hui、シエ・フイ)氏(44)は、若年層の育成・指導には「大きな問題がある」と言う。

「20年前と何も変わっていない。(効果的な構造の)組織がないからだ。ユースサッカーの育成はまるで砂漠みたいだ」。謝氏は最近、自チームからスペインリーグへ移籍した中国代表、武磊(Lei Wu、ウー・レイ)選手の名前を挙げ、「ウー・レイがいても、せっかくの才能を失わせてしまう」