【3月15日 AFP】英領北アイルランドで1972年に発生した英軍によるカトリック系住民の弾圧事件「血の日曜日事件(Bloody Sunday)」をめぐり、同地の検察当局は14日、元英軍兵士1人を殺人罪などで起訴すると発表した。北アイルランド紛争の中でも最悪の流血事件の一つは、47年を経て犯罪として裁かれることとなった。

「血の日曜日事件」は1972年1月30日、北アイルランド第2の都市ロンドンデリー(Londonderry)のカトリック系住民が多いボグサイド(Bogside)地区で発生、公民権を求めるデモ行進に英軍の空挺(くうてい)隊員が発砲し、13人を殺害した。その際の負傷がもとで後に1人が死亡し、死者は14人となった。

 この事件を機に、カトリック過激派アイルランド共和軍暫定派(Provisional IRA)への支持は拡大し、北アイルランド紛争は激化。約30年にわたってカトリック系とプロテスタント系の抗争が続いた。

 今回起訴されるのは、「兵士F(Soldier F)」としてのみ特定されている空挺部隊の元兵士1人で、罪状は殺人2件と殺人未遂4件。このほか元英軍兵士16人とIRAのメンバーだったとみられる2人が捜査対象となっていたが、いずれも証拠不十分で不起訴となった。

 犠牲者の遺族は、2件の殺人のみが起訴対象となったことに憤りをあらわにしている。当時17歳の兄弟を殺されたジョン・ケリー(John Kelly)氏は、「血の日曜日事件の遺族にとってはまだ終わらない」と述べ、不起訴処分を不服として法的措置を取る意向を表明。「死者は正義を求めて声を上げることはできない。彼らのために声を上げるのは、生きている人々の義務だ」と語った。

「血の日曜日事件」をめぐる12年に及ぶ公式調査は、英司法史でも最大の規模となった。空挺部隊が統制を失っていたこと、死傷者は全員、兵士たちを傷つけたり命をおびやかしたりする脅威となってはいなかったと結論付けて、2010年に調査は終了し、警察が犯罪捜査を開始。同年、デービッド・キャメロン(David Cameron)首相(当時)が事件は「不当であり、正当化できない」と認め、英政府として正式に謝罪した。(c)AFP/Joseph STENSON