【3月5日 AFP】人の目には見えないが、海の生物を死に至らしめる海洋熱波によって世界中の生態系に被害が出ているとする研究結果が発表された。世界各地の影響を単一の尺度で測定した試みとしては、これが初となる。海洋熱波による影響は、今後さらに破壊的なものになるとみられている。

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 海洋熱波は定義上、特定海域の水温が、ある時期と場所に関する記録で上位5~10%に入るほど「極めて高い」状態が少なくとも5日以上続くこととされている。

 19の研究所が集まった国際的なチームは、さまざまな海域での海洋熱波の影響範囲を測定するために、生物と生態系の反応に関する1000件以上の現地調査結果から収集したデータを分析。このたび英科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)に掲載された論文によると、海洋熱波の発生日数は20世紀中期以降、50%以上増加している。 

 英国海洋生物学会(Marine Biological Association)の研究者で、論文の主執筆者ダン・スメール(Dan Smale)氏は、「世界的には、海洋熱波は発生頻度が高まるとともに長期化しており、過去10年間に大半の海底盆地で記録的な事象が観測されている」と指摘する。

 海水位より高い位置にある地表では、過去19年のうちの18年で観測史上最高気温が更新され、暴風雨、干ばつ、熱波、洪水などの深刻化を招いているが、スメール氏はAFPの取材に対して、「大気の熱波によって、作物や森林、動物個体群などに悪影響がもたらされるのと同様に、海の熱波によっても、海洋生態系が壊滅される恐れがある」と話した。

 猛暑が原因の死者は今世紀初めより数万人に及んでいるが、それに比べて海洋熱波は、科学的に注目されることがほとんどなかった。だが、海面水温の急上昇が続く状況もまた、破滅的な結果を招く恐れがある。