【4月3日 AFP】ある熱狂的サッカーファンの親子が、ブラジル国内で注目を集めている――。

 話題になっているのは、サンパウロを拠点とするカンピオナート・ブラジレイロ(ブラジル全国選手権)1部のクラブ、パルメイラス(Palmeiras)を応援する母シルヴィア・グレッコ(Silvia Grecco)さん(56)と息子のニコラス(Nickollas)君(12)。昨年、グレッコさんが盲目のニコラス君に観客席で実況する姿をテレビで捉えられて以来、2人はちょっとした有名人になっている。

 国内のテレビ番組に出演したり、パルメイラスの練習施設を訪問したりしたというグレッコさんは、パルメイラスの試合をスタンドから見ながら「この選手は半袖を着ているとか、スパイクや髪がどんな色をしているかなど、詳しく説明しています」と明かした。

 自閉症でもあるニコラス君は試合中にここぞという場面で友達と一緒に跳びはね、クラブのチームカラーである緑のTシャツを着て熱狂する数千人のファンと一体化していた。

 グレッコさんは「私の実況は感情的だから、決してプロフェッショナルではありません」「すべて自分が見たり感じたりしたことを話しています。レフェリーをののしったりすることだってあります!」と話す。

 一家では、ニコラス君の父親ときょうだいが別のチームを応援している。そこでパルメイラスの熱狂的なファンであるグレッコさんは、家族の分裂を防ぐために一計を案じた。

 それは誰あろうニコラス君の憧れの存在であり、フランス・リーグ1のパリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)でプレーしているネイマール(Neymar da Silva Santos Junior)に協力してもらうことだった。

 グレッコさんは、イベントでネイマールと面会した際のことを振り返り、「ネイマールが息子を肩車してくれたのです。息子がネイマールの髪の毛を触っていて、信じられないような瞬間でした! そこで、私がネイマールに子どもの頃はどこのチームを応援していたのか尋ねると、彼はパルメイラスのファンだったと答えてくれました!」と明かした。

「だから、息子には『ほらね、ニコラス? あなたのお母さんも、憧れの選手もそう。あなたはパルメイラスを応援しなくちゃ!』と言いました」

 先日、本拠地アリアンツ・パルケ(Allianz Parque)で行われたパルメイラスのホーム開幕戦では、地元のビジネスマンがグレッコ親子とニコラス君の友人らをボックス席に招待した。

 そのうちの一人でダウン症の少年は、大きなヘッドホンと代表チームのユニホームを身に着けながら、初対面の人々に腕を回して信頼のハグを交わしていた。自閉症を抱えている別の少年も、DJが流す音楽に合わせて激しく体を揺らしていた。

 しかし試合が始まると、少年たちの注目はピッチに集まり、シルヴィアさんが最後まで試合を実況。パルメイラスも彼らの期待に応えて1-0で勝利した。(c)AFP