【3月7日 Xinhua News】中国海洋大学(山東省青島市)はこのほど、関係機関と共同で黄海冷水塊海域でのサーモンの大規模養殖を開始したと発表した。中国の「海の穀倉」はさらに拡大されることになる。

 プロジェクトの主席科学者で、中国海洋大学の董双林(Dong Shuanglin)教授によると、同大学は、2年前から山東省日照(Rizhao)市で企業と協力し「黄海冷水塊良質魚類グリーン養殖プロジェクト」を始動、サーモンの養殖を始めた。今年1月初めに基本的な技術検証を終えたことから、大学と日照市、青島市の西海岸新区の地元企業は、青島市から約120カイリ、日照市から約130カイリの黄海冷水塊海域で、遠海深海におけるサーモンの大規模養殖を正式に開始したという。

 山東深海冷水塊海洋開発有限公司の張飛(Zhang Fei)副総経理によると、同プロジェクトの投資総額は43億5600万元(1元=約17円)で、深海用大型スマートいけすを利用し黄海冷水塊海域で深海サーモンの養殖を行う。養殖場面積は3000ヘクタールで、地上にも700ムー(約47ヘクタール)の産業パークと併設研究開発施設を建設する。プロジェクトが5年後にすべて操業を始めれば、年間4万5000トンのサーモンが生産できるという。

 第1期プロジェクトの投資額は5億元で、稚魚の養殖施設1カ所と順化施設1カ所、大型スマートいけす2カ所、養殖作業船1隻を建設・設置するという。張氏は「大型養殖設備の入札を現在行っている。2020年末には最初の養殖サーモンの販売を開始したい。そうなれば中国の食卓は豊かになる」と語る。

 中国沿岸の浅海域での養殖はここ数年で飽和に向かっており、狭い空間では産業間の摩擦や生態損失、病害リスクなどの一連の問題が起こりやすい。

 同大学の研究によると、黄海冷水塊の海域面積は13万平方キロメートル。5000億立方メートルの水量を有し、サケ・マス類など高級海洋冷水魚の養殖に適しているという。しかも、同海域では水温躍層と言われる垂直方向に水温が急激に変化する層が水面からわずか20~30メートルと世界平均より浅いことが分かっており、この層にある浅水冷海水を利用すれば、養殖コストを大幅に削減できる。同海域はまた、自浄能力が非常に強く、病害発生のリスクも低いため、養殖魚の品質は天然物に近く、漁労で得られる鮮魚の代替商品として社会性や経済性が高いという。

 「科学者は黄海冷水塊での養殖に大きな期待を寄せている」と語る董氏は、黄海冷水塊での養殖開発が中国の海水養殖の空間最適化で重要な突破口となることに期待を示した。(c)Xinhua News/AFPBB News