【2月22日 AFP】汚職疑惑を追及していたジャーナリストとその婚約者が殺害された事件からほぼ1年がたった東欧のスロバキアで21日、首都ブラチスラバなど数十か所でデモが行われた。

 昨年2月25日、ジャーナリストのヤン・クツィアク(Jan Kuciak)さんと婚約者のマルティナ・クシュニーロバ(Martina Kusnirova)さんが何者かに自宅で射殺された。事件を機に、スロバキア国内では、報道の自由と汚職に対する懸念が生じ大規模な抗議デモが行われ、事件の翌月にロベルト・フィツォ(Robert Fico)首相(当時)が辞任に追い込まれた。

 クツィアク氏は、スロバキアの政治家とイタリア系マフィアとの癒着疑惑や、これに関連する欧州連合(EU)の農業補助金支払いの不正に関する記事を発表しようとしていた。

 スロバキアの首都ブラチスラバでは約3万人がデモ行進した。主催者によると、スロバキア各地の数十の都市や町でも数千人がデモに参加したという。

 検察はクツィアク氏とクシュニーロバさんを殺害したとして女1人を含む4人を起訴した。検察が「Alena Zs」という名で特定しているこの女は5万ユーロ(約630万円)の報酬の支払いと2万ユーロ(約250万円)の債務を帳消しにする条件で殺害を命じたという。

 地元メディアの報道によると、女は昨年6月に詐欺の容疑で逮捕され現在も拘束されているスロバキアの実業家マリアン・コチュネル(Marian Kocner)容疑者(55)の下で通訳として働いていた。クツィアク氏はコチュネル容疑者の事業活動について調査を進めていた。コチュネル容疑者はスロバキアの与党「スメル(道しるべ)」の議員と結びつきがあったと言われている。

 国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団(RSF)」は今週、「警察および司法当局が完全に独立して業務を遂行できる状況を保証するどころか、その正反対のことが起きている」「一部の政治家は何よりもまして、自らの利益保護と保身を心配しているようだ」として、スロバキア当局に警告を発した。(c)AFP/Laszlo JUHASZ