【2月20日 AFP】英南部の労働者階級の町スウィンドン(Swindon)で30年前から操業してきた本田技研工業(ホンダ、Honda Motor)の工場が2021年に閉鎖されるとの発表に、メアリー・デイ(Mary Day)さん(68)は「大変なことになる」と語った。

 年金生活者のデイさんは、工場閉鎖発表後の最初のシフトに労働者らが出勤するなか、「こんなことになるとは思ってもみなかった。みんなそうよ」とAFPの取材で話した。

 ロンドンの西130キロにある人口18万人のスウィンドンは、19世紀に当時急成長していた鉄道産業の恩恵を受けて発展。製造業の街として今日まで生き延び、ホンダは町最大の雇用者だった。ホンダの工場閉鎖で直接危機にさらされるのは3500人の雇用だが、そのほかにも数千人が影響を受けるとされている。

 ホンダの工場の隣にはそれよりも小規模な工場があり、独自動車大手BMWのセダン「ミニ(Mini)」が生産されている。両工場とも同じサプライチェーンに依存しており、一部の地元住民はミニの工場が次に閉鎖されると思っている。

 セメント工場で働くアンドリュー・ホプキンズ(Andrew Hopkins)さん(46)は、「この辺りはなにもかもホンダに頼っている」と語った。

 1980年、ホンダは今はなき自動車メーカーのブリティッシュ・レイランド(British Leyland)と、ホンダ車の組み立てで提携した。これに続き1980年代には、当時のマーガレット・サッチャー(Margaret Thatcher)首相の下、企業に優しい環境と欧州市場へのアクセスの良さに引かれて、日本の自動車メーカーが次々と英国に上陸した。

 1985年、ホンダはスウィンドン郊外にあった第2次世界大戦(World War II)の飛行機工場の跡地を取得した。1989年にホンダの工場は操業を開始し、アコード(Accord)やシビック(Civic)などのベストセラー車を生産してきた。ここで生産されたアコードとシビックの約半数は欧州連合(EU)加盟国で販売される。

■結局はEU離脱が原因

 ホンダは、工場閉鎖の決定は世界の自動車産業の「かつてない変化」に基づくもので、英国のEU離脱(ブレグジット、Brexit)とは関係がないと強調している。だが2016年に行われたEU離脱をめぐる国民投票で、55%が離脱を支持したスウィンドンの住民らは、EU離脱が大きな原因だと考えている。

 公務員のジェーソン・フォスター(Jason Foster)さん(46)は「結局、一体全体どうして離脱するのかという問題に戻ってくると思う。そもそも誰が言い出したんだ。お話にならない」と語る。

 金融関係の仕事をしているリチャード・アボット(Richard Abbott)さんは、「自動車産業は概して英国から出て行きつつあるように見える」が、原因はEU離脱だろうと言う。

 保険業界で働くスミット・アガルワル(Sumit Agarwal)さん(39)は「ホンダの工場労働者にとって厳しい状況になるだろう。雇用を守るため政府が手を打つべきだ」と主張した。(c)AFP/Dmitry ZAKS