【2月18日 AFP】オーストラリアが国外に設けている難民収容施設での生活を6年間強いられてきたスーダン人男性が先週、世界的な人権賞「マーティン・エナルズ賞(Martin Ennals Award)」を受賞した。

 同賞が贈られたのは、アブドルアジズ・ムハマット(Abdul Aziz Muhamat)氏(26)。選考委員らは、豪政府の「非人道的な施策」に抗議するムハマット氏の「類いまれな忍耐力と勇気」を評価した。

 豪政府は以前から、船で入国を試みる亡命申請者について、手続きを待つ間パプアニューギニアのマヌス島(Manus Island)や太平洋の島国ナウルへ移送し、難民と判明した人々については豪国内での再定住を認めていない。

 ムハマット氏はスーダン西部のダルフール(Darfur)紛争を逃れ、首都ハルツームを経由しインドネシアへ渡った。豪へは船で3度入国を試み、その間に親友のうちの5人を失った。2013年、同氏が乗っていた船が当局によって拿捕(だほ)され、同氏はマヌス島へ強制移送された。以来他の数百人の男性と共に、同島内に収容されてきたという。

 ムハマット氏によると、施設に収容された難民は名前ではなく番号で呼ばれている。「私の番号はQNK002。システム上、私はこの番号でしかない」と明かしている。

 何もかもを奪われ、嫌がらせ、侮辱、暴力がまん延しているという収容所の職員はかつての軍人や雇い兵で、怒鳴って命令する上、食料は金網のフェンス越しに与えられるという。

 マヌス島とナウルの収容施設では、これまでに12人が死亡。うち1人は殴打の末に死亡し、自殺者も数人いた。中には十分な医療を受けられずに亡くなった人もいると、ムハマット氏は話している。

 マーティン・エナルズ財団(Martin Ennals Foundation)のディック・オースティング(Dick Oosting)理事長は声明で、「ムハマット氏はほぼあらゆる基本的人権を共に奪われた人々のため、声を上げることを決して諦めなかった」と称賛した。

 授賞式への出席を理由に、ムハマット氏にはスイスのビザが付与され、収容所から出ることも許可された。ただ同氏は収容所での人権擁護活動を続けるため、マヌス島へ戻ることを望んでいるという。(c)AFP/Nina LARSON