【2月15日 東方新報】中国ネット通販大手の「蘇寧易購(Suning.com)」の張近東(Zhang Jindong)董事長は12日、同社の新春イベントで「万達百貨」傘下の百貨店の全店舗37店を買収したと発表した。蘇寧にとっては、単に1回の買収劇ではなく、経営の重点として百貨・小売業に注力していくことを示している。

■「万達百貨」を買収し「蘇寧」は小売りの版図を拡大

 家電製品の小売りで起業した「蘇寧」はこの数年、「全光景(フル・シーン)小売り」を実現するための布石をとってきている。家電販売業を越え、ベビー・マタニティ、スポーツウエア、生鮮スーパーなど多くの分野に進出し、商品に合わせて「紅孩子(redbaby)」「蘇寧小店」「蘇鮮生(SU Fresh)」など、実店舗を次々と展開してきた。

 蘇寧易購の孫為民(Sun Weimin)副董事長は12日、取材に応じ、「蘇寧の最終目標はオンラインとオフライン、実店舗で手に触れる全光景の百貨小売り業態を作り上げ、顧客に多種多彩なデジタル化した買い物体験を提供していくことだ」と語った。「今回の買収により、優良なオフライン資源を速やかに取り込み、商品のサプライチェーンの変革を進めて収益を改善する。伝統的な百貨店の概念を破り、小売り版図の『百貨』の部分を拡大する」と語った。

 小売りの新業態に取り組む中で、蘇寧が北京で準備を進めていた1軒目の映画館も静かにスタートした。試験期間のためか、対外的な宣伝は控えめだが、「食事+映画」の新しいビジネスモデルを魅力に感じるファンは少なくない。郊外の慈云寺(Ciyunsi)という場所にあり、14の映画放映室のほかレストランがあり、注文すると放映室まで食事をデリバリーしてもらえる。

 蘇寧の映画館は、同じグループの生鮮食品を扱うショップ「蘇鮮生」と連動しているため、蘇寧の映画館で食事のデリバリーサービスを頼めることが大きな特徴となっており、観客は海鮮料理を楽しみながら、最新の映画を楽しむことができるようになっている。

■経済観察:万達集団は資産を「減量」

「万達百貨」の37店舗は、そのほとんどが大都市中心部にあり、会員数は400万人を超える。経営は近年、決して悪くなく、資料によると、売り上げは安定して成長を続けており、純利益も右肩上がりだ。

 万達集団(Wanda Group)の王健林(Wang Jianlin)董事長は2017年から、万達集団の負債率を下げ、資産の減量を図るため、「痩身(そうしん)」プロジェクトを始動。傘下の不動産や土地を大量に処分した。

 万達の「痩身」に伴い、蘇寧も約1年前から万達との取り組みを進めていた。昨年1月29日、蘇寧は投資者らと共に、万達集団と戦略的投資契約に調印。95億元(約1560億円)を投じて万達の株式を購入している。その1年後、蘇寧は万達の百貨店を買収することで百貨店経営の夢を実現させただけでなく、万達に協力し「痩身」に手を差し伸べたのだ。(c)東方新報/AFPBB News