【2月13日 AFP】ロシア下院は12日、同国のインターネット通信を国外のサーバーから切り離すことを可能にする法案の1回目の採決を行い、賛成334、反対47で可決した。反対派は、これは検閲強化の取り組みだと批判。さらに、北朝鮮のような外部から隔離されたネットワークの構築につながる可能性があるとしている。

 法案は1回目の採決を通過したものの、審議では少数派政党の議員多数が規定の曖昧さや実施費用の高さを批判。異例の激しい議論が行われた。

 法案の起草者らは、米国が昨年発表した新たなサイバーセキュリティー戦略に言及し、ロシアはネットワークの安全性を確保しなければならないと訴えた。米国の新戦略はドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が発表したもので、ロシアがサイバー攻撃に及びながら刑罰を免れていると主張している。

 法案の目的は、米国がサイバー空間でロシアのネットワークを脅かす行動に出た場合に「ロシアのインターネット通信の長期的かつ安定的な機能を確保する防御機構」を設けること。

 法案は「インターネット通信の経路を確保・制御する」中核施設の創設を提案。また、「脅威に耐えるための技術的施策」の導入をインターネット接続業者(プロバイダー)に求めていくとしている。

 さらに法案は、ロシアのインターネットが国外から隔離された状態で機能できるかを確かめるため、定期的な「訓練」を行うことを規定している。

 ロシアでは過去、世界的な交流サイト(SNS)に対する統制や、メッセージアプリ「テレグラム(Telegram )」の利用阻止を試みる措置が取られており、インターネットの自由を訴える活動家らは、今回の法案も検閲強化の試みだと指摘している。

 インターネット規制への反対運動を展開する団体「ロスコムスバボダ(Roskomsvoboda)」のアルチョーム・コズリュク(Artyom Kozlyuk)代表は、法案で示された措置を実施する場合、官民合わせて年間1000億ルーブル(約1700億円)余りの費用がかかるとみる。

 一部には、ロシアは中国式のファイアウオールによるインターネット検閲を検討していると批判もあるが、コズリュク氏は、北朝鮮のように国全体を内部ネットワーク化する方が安価で簡単だと指摘。「北朝鮮の例は、完全に自立したインターネットがあり得ることを示している」と述べた。

 ロシアにおけるインターネット監視の歴史を扱った共著のあるアンドレイ・ソルダトフ(Andrei Soldatov)氏は、法律が成立すれば、ロシアは世界のインターネットから自国を切り離すことも、政情不安や抗議行動で混乱の生じた地域に限定してインターネットを使えなくすることも可能になると指摘している。(c)Maria ANTONOVA