【2月17日 AFP】カンボジア、シアヌークビル(Sihanoukville)。たばこの煙が立ち込めるカジノから、バカラ賭博で1500ドル(約16万円)を損したビジネスマンが立ち去った。海岸沿いのこの街で見慣れたものになりつつある光景だ。

 シアヌークビルは今、急速に中国人の賭博師や投資家らを呼び寄せる街へと変化している。そのスピードは、置き去りにされている地元住民らを不安にさせるほどだ。

「今夜負けても大したことではない。明日になったらまた運試しをするつもりだ」。カジノ客のドン・キアン(Dong Qiang)さんはそう語った。

 カンボジアで崇拝されている故国王にちなんで名付けられたシアヌークビル(Preah Sihanouk)州の州都シアヌークビルは、かつてのどかな漁師町だった。だが、最初は欧米のバックパッカー、次いでロシア人富裕層らに注目され、現在は中国系の投資によって、中国本土からの観光客のための巨大なカジノスポットに姿を変えつつある。

 カジノは中国では禁止されているが、アジアのラスベガス(Las Vegas)と称されることもある中国特別行政区のマカオには、大規模なギャンブルビジネスを認める特別な法律がある。

 そのマカオに代わる新たな人気カジノスポットとなりつつあるのが、シアヌークビルだ。目下、中国系カジノ約50軒とホテル複合施設数十軒が建設されている。

 その一つ、オリエンタル・パール・カジノ(Oriental Pearl Casino)は、大勢の客でにぎわっていた。緑のフェルトで覆われたテーブルの上でカードがシャッフルされる間、中国人の男性客10人が静かに椅子に座っていた。

 フロア上では計数百万ドルが客の手から手へと渡っている。だが内部関係者らによると、ネット上のギャンブルサイトを運営している「秘密の部屋」で、さらに大金が取り引きされているという。

 共産主義国である隣国・中国との親密な関係が意味するものは、かつて貧困国だったこの東南アジアの国に対する巨額投資だ。多額の資金がカンボジア経済に流入したが、中国のこれまでの劣悪な人権侵害についてはほとんど問題視されたことがない。