【2月4日 AFP】ロシアでは高齢の女性たちが、わずかばかりの年金の足しにしようと、道端で手編みの雑貨を売る姿が至る所で見られる。

 最近、彼女たちのこうした素朴な手芸に対するイメージを変えようと、インスタグラム(Instagram)で「グラニーシック(一昔前のおしゃれ)」を売り込む新たなプロジェクトが始動した。女性たちが手袋や靴下といった手編み雑貨をネットで販売する支援を行っている。

 プロジェクトに参加している女性の一人、ニナ・ロシュコバ(Nina Lozhkova)さん(58)は、自分で編んだ雑貨を長年販売したいと思っていた。「でも、地下鉄のそばで売るのは少し恥ずかしい。ここでなら、自分は貧乏人なのではなくクリエーターだと感じられる」。6歳の孫がいるロシュコバさんは、インスタグラム上のプロジェクト「グラニーズ(Granny's)」についてそう語った。

 ロシア北西のサンクトペテルブルク(St. Petersburg)を拠点としているグラニーズには現在、仕事を引退した人ら約40人が参加。同プロジェクトのインスタアカウント「@russiangrannies」には、ニット製品を着た大人や子どものおしゃれな写真が多数掲載されており、フォロワー数は5000人を超える。

■年金受給者らの苦しい生活

 ロシアの年金の平均月額は約200ドル(約2万2000円)だが、グラニーズに参加する55~87歳の活動的な高齢女性たちの月収は、450~1000ドル(約5万~11万円)だ。

 多くのロシア人は年金受給年齢になっても、生活費を稼ぐために仕事を続けるか、あるいは子どもたちからの経済的援助に頼らざるを得ない。

 さらに、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は昨年、国民年金の受給年齢を女性は60歳、男性は65歳に段階的に引き上げることを決め、国民の激しい怒りを買った。

■おばあちゃんたちの「献身的役割」

 プロジェクトが話題になるにつれて、ウラル地方(Urals)やロシア北部といった遠方の地域からも新たに参加する人が出てきた。

 同サイトには衣類やアクセサリーなど幅広い商品が掲載されている。1点数ドル(数百円)のお手頃な商品から、メリノウールやペルー産ウールを使った180ドル(約2万円)前後の高級品までそろっている。

 アカウント開設の背後には、市役所の仕事を最近辞めて同プロジェクトを立ち上げたユリア・アリエバ(Yulia Aliyeva)さん(27)の存在がある。アリエバさんは、高齢女性を支援するだけでなく、「ロシアのおばあちゃんたちの献身的役割」に人々の注目を集めたいと語る。

「ロシアでは伝統的に、おばあちゃんたちが重要な役割を果たしています。孫の世話をしたり、おいしい料理を作ったり、靴下を編んだり」と、アリエバさん。「でも年金は少なく、引退後は社会生活が終わってしまったようになり、新たな仕事を見つけることも難しい」

 アリエバさんの祖母もグラニーズの一員だ。「もちろん、インターネットを使って商売をするということ自体、型にはまったおばあちゃんイメージを変えるものかもしれない」「参加しているおばあちゃんたちは皆、このプロジェクトのためでなかったら、自分で始めることはできなかったと言っています」 (c)AFP/Marina KORENEVA