【1月14日 AFP】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長は先週、4回目となる訪中を果たした。金委員長を再度受け入れたことにより、中国政府は、冷戦時代の同盟国と米国の接近をはたで見ているつもりはないというメッセージを世界に発信することとなった。

 米朝間の核交渉が再び行われようとしているなか、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席が金委員長と会うことは必然だとアナリストらは言う。事実、金委員長の訪中はいわば儀式のようになりつつある。昨年は米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領、韓国の文在寅(ムン・ジェイン、Moon Jae-in)大統領との歴史的な首脳会談の前後に、金氏は中国を訪れ習氏と会談している。

 いかなる合意においても蚊帳の外に置かれることを良しとしない中国は、国連(UN)の対北朝鮮制裁を指示したことで悪化してしまった同国との関係改善に努めている。しかし、北朝鮮の核実験に対して厳しい態度を示した中国政府ではあるが、数十年もの間、同盟国であってきた北朝鮮が、自国をだしにして米国と接近することを快くは思わないだろだろう。

「(中国は)北朝鮮と韓国の関係改善によって自分たちの利益が脅かされるとは考えていないが、北朝鮮と米国が接近する可能性については違う。ましてやその米朝が連携して中国に対抗するようになれば、中国政府にとっては悪夢となる」──そう指摘するのは、米ワシントンにある戦略国際問題研究所(CSIS)アジア部門のボニー・グレーザー(Bonnie Glaser)上級研究員だ。

 同氏は、「トランプ政権下ではそうしたことも起き得ると中国政府は考えているだろう。習氏が金氏を引き寄せておく動機の一つはそれだ」と述べ。また、金氏が韓国の文大統領との接触を開始した際、習氏が「非常に素早く」金氏に接触した点も指摘した。

 中国は北朝鮮を自国の影響が及ぶ範囲にとどめておくことに余念がない。それは中国にとって、韓国に駐留する米軍2万8500人を自国から遠ざけておくために、北朝鮮の国土が緩衝になっているからだ。

 シンガポールで行われた初の米朝首脳会談で金・トランプ両氏は、朝鮮半島の非核化を目指すと曖昧な言葉で書かれた共同声明に署名したが、以後、進展はない。