【1月10日 AFP】自動運転車両に使用されているものと同様の技術が、米メキシコ国境の壁建設をめぐる問題への解決策となるかもしれない──。米ネバダ州ラスベガス(Las Vegas)で開催中の世界最大級の家電見本市「国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(International Consumer Electronics ShowCES)」で、同技術を利用したシステムが披露された。

 CESで披露されたのは、レーザー光を使って検知・測定する「ライダー(LIDAR)」を応用したシステムだ。出展したスタートアップは、これを活用することで、実際に壁を建設するよりも安価で環境への影響も限定的と指摘する。

 ライダーを使った国境監視システムの開発に取り組むテクノロジー企業数社のうち、Quanergy Systemsは、インド・パキスタン国境、および米南部の国境の一部で試験的プロジェクトを進めていることを来場者らにアピールした。

 同社最高経営責任者(CEO)のロエ・エルダダ(Louay Eldada)氏は、「昼夜を問わず、また気象に左右されることなく侵入者を監視して自動追跡し、GPSの位置情報を国境警備当局にリアルタイムで送信できる」と説明する。

 エルダダ氏によると、こうしたシステムにかかる費用は、米・メキシコ間の国境全体に物理的な柵を設置する場合の「約2~3%」に抑えられるという。また、このシステムを利用することで、環境への影響や運用費用といった面でさらなる利点もあるとしている。

 実は米政府も約10年前に同様の計画を視野に入れたことがある。ただこの時は、効果的な運用ができないのではとの懸念から計画は中止となった。

 しかしエルダダ氏は、「レーザー光を用いて物体を検知・測定」するライダーの開発や人工知能(AI)など、近年では技術の大幅な進歩がみられると指摘する。

「ライダーは遠方の対象物を捉えることができるため、国境に到達するよりも前に検知することが可能となっている。AIソフトウエアも大きな進歩を遂げた」

「このシステムでは高解像度のイメージを得ることができ、対象者の行動を明確に把握することが可能となっている。得られる多くの情報から、捉えられたイメージが警備員のものなのか、それとも国境を違法に越えようとしている人物のものなのかを容易に判別できる」

 映像前半は、CESで披露されたライダーを使った国境監視システム。8日撮影。後半は、米メキシコ国境。2018年11月、4月撮影。(c)AFP