【1月8日 AFP】6日にペルーで開幕したダカールラリー2019(Dakar Rally 2019)では、25歳のルーカス・バロン(Lucas Barron)がダウン症患者として初めて大会に参戦し、10日間に及ぶ世界一過酷なラリーで歴史を刻む。

 コースの70パーセントが砂地である全長5000キロメートルのレースで、父親であるジャック(Jacques Barron)のコ・ドライバーを務めるルーカスは、AFPの取材に対して「目指すは完走だ。目標を達成したい」「このレースは自分にとって最高だ。ルートは熟知しているから走りやすいだろう」と語った。

 これまでダカールに合計5回参戦している父親と一緒に1年半トレーニングを積んできたルーカスは、2017年に新設されたUTV(多用途四輪車)部門でオフロードを走る。ルーカスはあふれんばかりの笑みで「準備はできているし、砂丘を攻略してみせる」と意欲を口にした。

 他にも水泳をはじめサッカー、サイクリング、サーフィン、水上スキーなどをたしなむ生粋のスポーツマンで、お気に入りの音楽はロックとヒップホップだというルーカスは、父親のメカニカルアシスタントという重要な役割を担うといい、「エンジン、ロード、タイヤの様子を確認する手助けをする」と明かした。

 今大会はアルゼンチン、チリ、パラグアイ、そしてボリビアが緊縮政策で開催地から撤退したため、全行程がペルーで行われることになっているが、ルーカスは同国の首都リマ出身で母国の地形に慣れている。昨年9月には、本番への準備としてダカール・シリーズの一つデサフィオ・インカ(Desafio Inca)に参加し、南部にあるイカ砂漠(Ica Desert)を走って7位に入った。

 ダウン症は生涯にわたり知的障害や発達遅延を引き起こす可能性がある。しかし、現在56歳の父ジャックは、ダカールの主催者は息子の参加に何の懸念も示さず、必要なのは他の競技者と同様にメディカル検査に合格することと、必要書類を提出することだけだったと明かした。

「ルーカスはすでに、ダカールに参戦するための国際自動車連盟(FIA)のライセンスを取得している」というジャックは、ルーカスが何も恐れておらず、問題があった場合でも対処法を分かっていると強調した。

「彼はベルトやオイルの温度、タイヤの空気圧の見方を分かっている」「ルーカスの目は、他の車や障害物と衝突するのを避けるための車の目になる」「ダウン症の人々でも、ある程度の能力は発達する。ルーカスはどんなスポーツもこなせるんだ」

 映像前半は、リマで昨年12月18日撮影。後半は、砂丘上でのレース。昨年9月撮影。(c)AFP/Carlos MANDUJANO