【1月4日 AFP】2014年ソチ冬季五輪のフィギュアスケート男子シングルで銅メダルを獲得したカザフスタンのデニス・テン(Denis Ten)さん(25)を刺殺したなどとして殺人などの罪に問われた被告2人の裁判が、同国最大都市のアルマトイ(Almaty)で始まった。国営通信社カズインフォルム(Kazinform)など、地元メディア2社が3日に伝えた。

 母国を代表するフィギュアスケーターだったテンさんは、昨年7月にアルマトイ中心部で車のミラーを盗もうとしていた男たちに刃物で刺され死亡した。アルマン・クーダベゲノフ(Arman Kudaibergenov)とヌラリ・キヤソフ(Nuraly Kiyasov)の両被告は初公判で、殺人について無罪を主張したという。

 独立系メディアのテングリニュース(Tengri News)によると、検察側はクーダベゲノフ被告がテンさんを押さえ込み、キヤソフ被告が「デニス・テン氏の大腿(だいたい)動脈を2度にわたり刺した」と主張した。クーダベゲノフ被告が殺人を否認して盗みについては認めている一方で、キヤソフ被告は殺人と窃盗の両方に関して無罪を主張している。

 また、窃盗の共犯者であり、事件を通報しなかったとして起訴された女1人が出廷し、無罪を主張して保釈を要求。証言台では「自分の知人が殺意を持っていたことは知らなかった」と訴えたという。

 国民的英雄であるテンさんが殺されたことによって、カザフスタンでは国中に悲しみが広がった一方で、軽犯罪を取り締まれていない警察に対して怒りが向けられたほか、内相の辞任を求める呼び掛けも起きた。

 韓国独立の戦士として名高い閔肯鎬(ミン・グンホ、Min Keung Ho)の子孫にあたるテンさんは、ロシアを代表するコーチのタチアナ・タラソワ(Tatiana Tarasova)氏に師事した後、米国人指導者のフランク・キャロル(Frank Carroll)氏の下でトレーニングを行っていた。

 テンさんは2013年と2015年の世界フィギュアスケート選手権(ISU World Figure Skating Championships)でそれぞれ銀メダルと銅メダルを獲得し、韓国ソウルで行われた2015年の四大陸選手権(ISU Four Continents Figure Skating Championships 2015)では金メダルに輝いた。(c)AFP