【12月30日 AFP】重い病気の末期症状で米国の病院に入院していたイエメン出身のアブドラ・ハッサン(Abdullah Hassan)ちゃん(2)が28日、死去した。アブドラちゃんの家族を支援していた米人権団体が29日、明らかにした。アブドラちゃんをめぐっては、母親でイエメン人のシャイマ・スウィラ(Shaima Swileh)さんがドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が出した入国禁止令のために息子に会えない状況が続き、メディアの注目を集めていた。

 トランプ氏が出した入国禁止令は、イスラム教徒が多数派のイラン、リビア、ソマリア、シリア、イエメンと北朝鮮からの渡航者、およびベネズエラ(Venezuela)の一部政府高官の入国を禁止するもの。

 希少な遺伝性疾患があるアブドラちゃん(2)は治療のために父親のアリ・ハッサン(Ali Hassan)さんと渡米し、カリフォルニア州オークランド(Oakland)市内の小児病院に入院。父親のハッサンさんが米市民であることからアブドラちゃんも米国の市民権を保有していたが、母親のスウィラさんはイエメン国籍だったため、息子が重篤な容体に陥ったにもかかわらず、入国ビザの申請を何度も却下された。

 こうした状況をハッサンさんがテレビカメラの前で涙ながらに訴えたこともあって、アブドラちゃん一家の悲運は広くメディアの注目を集めるところとなり、スウィラさんが滞在していたエジプトの在カイロ米大使館は入国禁止令の免除をスウィラさんに適用。スウィラさんは19日、米国のアブドラちゃんと再会したが、アブドラちゃんは28日、入院していた病院で亡くなった。
 
 ハッサンさんは、一家を支援してきた米イスラム関係評議会(Council on American-Islamic RelationsCAIR)を通じて声明を発表。「私たちにとって人生の光だった幼い息子にさよならを言わねばならなかった。胸が張り裂ける思いです」と述べた。

 一家に協力して米政府機関と交渉したCAIRの弁護士、サード・スウィーレム(Saad Sweilem)氏は、「ハッサンさんたちの勇気は、トランプ大統領の対イスラム教徒入国禁止令という現実に立ち向かわねばと米国人を力づけてくれた」と語り、「アブドラちゃんはわれわれ全員にとって、外国人憎悪(ヘイト)や家族が引き離される現状との闘いを導く光だった」と付け加えた。

 トランプ氏は2017年1月に大統領に就任すると、1週間もしないうちにイスラム圏を対象とした一時入国禁止令を出し、世界に衝撃を与えた。その目的について、トランプ氏はテロリストの入国を阻止するためだと主張したが、批評家らは反イスラム対策であることは明らかだと批判。この大統領令をめぐる法廷闘争が展開されてきたが今年1月、連邦最高裁判所は修正版について審理を実施するとしていた。(c) AFP