【12月22日 AFP】インドネシア西ジャワ(West Java)州の小学3年生、ムフリス・アブドゥル・ホリック(Mukhlis Abdul Holik)君は、背中にナップサックをくくりつけ、熱した地面から身を守るために両手をサンダルに突っ込み、学校までの長い道のりを進み始める。

 地元の村から延びる岩がちな小道を、すきっ歯のホリック君は這いながら進み、木造の古い橋では脚を宙に浮かせ、逆立ち姿で進んでいく。

 大きく変形した小さな脚で立ち上がっても、同級生の腰に届くかどうかという8歳の少年にとって、ただの通学とは到底言えない。

 ホリック君の母親ピピン(Pipin)さんは、「通学路は険しいけど、毎日這いながら通っている」と明かし、「お金があればバイクタクシーで学校へ行けるけど、余裕のない状況では這って通うしかない。一度も文句を口にしたことはないし、雨が降ろうが日が照ろうが、いつだって学校に行く」と語った。

 その一方、2億6000万人の人口を抱えるインドネシアで、この心温まる話は一大センセーションを巻き起こした。ホリック君が家から学校まで往復約6キロの道のりを毎日通う姿がメディアで報じられると、同国のジョコ・ウィドド(Joko Widodo)大統領との面会が、国連の「国際障害者デー(International Day of Persons with Disabilities)」である今月3日に実現した。

 ウィドド大統領は「アブドゥルに会った際、何か欲しいものがあるか聞いたんだ」「私から何らかのプレゼントが欲しいのかと思っていたが、何も欲しがらなかった。ただ、大学に行きたいと言ったんだ」と語った。

 ホリック君は憧れの存在であるウィドド大統領に会って将来の夢を話したことについて、「とても幸せ」と打ち明けた。AFPに対してホリック君は「僕は消防士か医師、宇宙飛行士になりたい」と語っている。(c)AFP