【12月22日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は今週、シリアでイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」を「打倒した」として、同国に駐留する米軍の撤退を発表した。

 クルド人とアラブ人戦闘員から成る「シリア民主軍(SDF)」が進める対IS作戦を支援する有志連合軍では、米軍の兵士や軍事顧問らが中核的役割を担っている。

 では、ISは本当に打倒されたのだろうか?

■続く戦闘

 ISは現在、シリアの東部と、中部ホムス(Homs)県から対イラク国境地帯にかけて広がる広大なバディヤ(Badiya)砂漠の少数の地域に追いやられている。

 かつて支配していた領土のほぼすべてを失ったにもかかわらず、ISは今も攻撃能力を維持しており、ここ数か月でもシリア国内で死者を出す攻撃を複数実行しているほか、残る拠点の奪還に向けた攻勢に対して徹底的な抗戦を続けている。

 在英NGO「シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)」によると、ISは19日、新たな逆攻勢に打って出た。攻撃対象となったのは、東部デリゾール(Deir Ezzor)県ハジン(Hajin)周辺で先週SDFによって奪還された拠点だ。

 有志連合によるとハジン周辺には約2000人のIS戦闘員が追い込まれており、現在も支配下に置く地域を死守している。

■潜伏中の戦闘員

 ISは多くの潜伏人員を保持しており、シリア国内で敵対勢力に奪還された都市や地域での自爆攻撃に利用している。

 シリア人権監視団のラミ・アブドル・ラフマン(Rami Abdel Rahman)代表は、ISには「失うものは何もない」と指摘。「自らの拠点に対する攻撃の後、数千人のIS戦闘員が『休眠細胞』となり、北部のマンビジュ(Minbej)から東部のデリゾールまでの奪還済み地域に広がっている」と述べた。

■外国での攻撃

 ISは打撃を受けたものの、シリア国外、特に有志連合の参加国での攻撃を続けており、これまでさまざまな都市が標的となっている。

 今月11日に仏東部ストラスブールのクリスマス市で発生し5人が死亡した銃乱射事件では、ISが犯行声明を出している。また、11月にオーストラリア南東部メルボルンで起き1人が死亡した刃物による襲撃事件も、IS傘下のプロパガンダ機関アマク(Amaq)が「イスラム国の戦士」によるものだと発表している。

 専門家らは、米軍のシリア撤退はISに新たな息吹を吹き込むことになるだけだと指摘する。新米国安全保障センター(CNAS)の専門家ニコラス・ヘラス(Nicholas Heras)氏は「トランプ大統領の行動は本末転倒だ。シリアではISIS(ISの別称)は打倒されていない」と述べた。(c)AFP/Layal Abou Rahal