【12月21日 AFP】中央アジアに位置するキルギスの首都ビシケクの自宅で、アシラ・アリムクロワ(Asyla Alymkulova)さん(33)は涙をこらえながら夫が隣国中国の新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)の収容施設に連行されたと聞いた時の様子を語った。

 アリムクロワさんの夫、シャルベク・ドーロトカン(Shairbek Doolotkhan)さんは「いくつかの問題」を処理するため、新疆ウイグル自治区にある鉱山会社の支社へと出張した際、妻に何も心配はないと語っていた。ドーロトカンさんは中国生まれのイスラム教徒で、会社の重役だった。

 しかし昨年10月、ドーロトカンさんとの連絡は途絶えた。

 夫の身に何が起きたのかアリムクロワさんはまったくわからなかったが、数週間後、会社から電話があり、夫が「勉強のため」に収容施設に送られたと知らされた。

 アリムクロワさんは「夫は何を勉強しているの?」と聞き返したが、会社はただ「なんとか連れ戻してみる」と答えるのみで、がくぜんとしたという。しかも、うまくいくという保証はまったくなかった。

 ドーロトカンさんが連行された「教育施設」は、新疆ウイグル自治区に大量に設置されている超法規的収容施設の一つとみられている。国連(UN)の推計によると、新疆ウイグル自治区の収容施設にはウイグル人をはじめとするイスラム教徒の少数民族ら100万人あまりが収容されている。

 ドーロトカンさんの失踪は中国の包囲網の広範さを示しているのみならず、今やキルギスとつながりのある人物にもその影響が及んでいることを意味している。また、隣国カザフスタンでも家族が新疆ウイグル自治区で行方不明になったという報告が複数寄せられているという。

 アリムクロワさんは先月、他の十数人とともにロビー団体「在中国キルギス人保護委員会(Committee to Protect the Kyrgyz People in China)」を立ち上げ、中国に経済支援を大きく依存するキルギス政府に対し、新疆ウイグル自治区の収容施設について中国に圧力をかけるよう求めた。

 中国当局は収容施設について、イスラム過激主義や分離主義に接近しそうな人物のための「職業訓練センター」だと主張しているが、人権団体によると、少数民族のイスラム教徒たちは長いひげをたくわえたり、顔を覆うベールをしているなどの違反を理由に強制的に拘束されているという。

 キルギス人の拘束疑惑について中国外務省に問い合わせると、「情報がない」との回答が返ってきた。またキルギスの外相にも拘束について質問したが、コメントを拒否した。

 キルギスやカザフスタンの当局は中国と事を構えることに及び腰だが、米国とドイツは新疆ウイグル自治区への国連代表団の立ち入りを中国側に求めている。

 中国はこれまで再教育施設の存在を否定してきたが、最近になって「職業訓練および教育のための施設」であるとその存在を擁護し、施設では標準中国語の教育や職業技術向上が行われているほか、スポーツやフォークダンスも認められていると主張している。

 10月に公表したAFPの調査結果によると、新疆ウイグル自治区の当局は再教育施設用に警棒や電気棒、手錠、催涙スプレー、スタンガン、鉄条網などを購入していた。(c)AFP/Tolkun Namtbayeva, with Christopher Rickleton in Almaty