【12月21日 AFP】フォーミュラワン(F1、F1世界選手権)で通算3度の総合優勝を果たした名ドライバーのニキ・ラウダ(Niki Lauda)氏は20日、肺の移植手術は1976年のドイツGP(German Grand Prix)で遭遇した恐ろしいクラッシュよりもひどい経験だったと話した。

 現在69歳のラウダ氏は、初めて総合優勝を果たした1975年の翌年、独ニュルブルクリンク(Nurburgring)で大クラッシュに遭い、重度のやけどを負いながらも死を免れた。

 伊紙ガゼッタ・デロ・スポルト(Gazzetta dello Sport)のインタビューに応じたラウダ氏は、「ドイツで事故に遭ったときに問題だったのはほんの1か月程度のことだった。やけどを負い焼かれてしまったがすぐに退院することができた。今回は本当に長かったが、今はここにいる」と話した。

 ラウダ氏は8月にオーストリアで肺移植の手術を受け、2か月後に退院した。「とてもハードだということは分かっていた。そういった状況でできることは一つだった。戦うことさ」「怖いと思ったことは一度もない。スペシャリスト達に身を委ねたからね。どんな時でも戦ってきたし、今もそうしている」

 現役時代にクラッシュで死の危機に直面したラウダ氏だったが、三つのGPを欠場しただけでシーズン終盤にはレース復帰を果たした。クラッシュの際に吸い込んだガスの影響に苦しめられたラウダ氏は、1997年と2005年には腎臓移植も受けた。

 また、メルセデスAMG(Mercedes AMG)で非常勤会長を務めるラウダ氏は、フェラーリ(Ferrari)のセバスチャン・ベッテル(Sebastian Vettel)から届いた直筆の手紙に感銘を受けたと言う。

「セバスチャンが送ってくれた手紙は本当にうれしかった。彼自身の手で書いてくれた前向きな言葉と愛情のある思いやりに満ちた手紙だった」「手紙をもらえるなんて考えてもいなかった。ドライバーというのは運転するだけで、通常そういったことはしないからね。彼は人として素晴らしい」

 ラウダ氏はルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton)とベッテルの総合優勝争いをテレビで見るために早く回復することを目標としていたと話す。

「一つのGPも見逃さなかった。週末にはガレージに電話をかけた。彼らは何が起きているのかいつも私に話してくれた。みんなとコースサイドにいるような感覚だった」「長年一緒に働いてきた人たちの暖かさを再発見したと言うべきだろう。いいやつばかりでみんな心配してくれた」 (c)AFP