【12月25日 CNS】このほど開催された国際学術会議「NIPS(神経情報処理システム大会)」で、阿里巴巴(アリババ、Alibaba)の科学研究部門であるアリババ達摩院(DAMO)」の研究者が、宅配の分野で使われ始めた人工知能(AI)音声技術のプレゼンテーションを行った。

 アリババ系物流プラットフォーム「菜鳥(Cainiao)」で使われているAI音声アシスタントは、約30秒間で、顧客に話の腰を折られたり、顧客の考えが途中で変わったり、顧客に沈黙され反応がなかったり、といった状況の中でも柔軟に対応し、配達先住所の変更手続きを完了させた。

 これに先立ち、米グーグル(Google)は5月、人間に似せた音声アシスタント「デュープレックスDuplex」を発表し、顧客のレストラン予約の手伝いをするAIに業界で多くの注目を集めていた。

 世界的に権威のある学術誌「MIT Technology Review」によると、アリババのプレゼンの中で起きた一幕は、人と機械の音声交流の新たな一歩となったという。

 AIが顧客に「明日の朝配達で良いか」と尋ね、顧客が「朝は家にいない」と答えると、AIは直接「はい」あるいは「いいえ」と答える代わりに、隠れた人間の意図を読んで、次なる行動を取ったのだ。

 同誌は「人間同士の対話の中では普遍的にあることでも、ロボットは往々にしてうまく対応できない。プレゼン効果から見ると、アリババのAI音声アシスタントはうまく対応できていた」と、アリババのAI音声技術力がすでにグーグルを追い抜いた、との評価を示した。

 このほか、アリババのAI音声アシスタントは、ロボットと人間の交流の中で、言葉を「話したり聞いたり」するだけでなく、人間の語気、語調、速さを学習してまねることにより、対話の過程で人間が相手をロボットと話していると感じさせないという。5月にアリババが中国でこの技術を披露した際には、会場の観衆はまるで本物の人間と同じだと驚いたものだった。

 今年の中国の「双11(独身の日)」の期間、このAI音声アシスタントは数百万人の顧客にサービスを提供した。「菜鳥」のデータによると、配達員1人は1日に約150〜200個の荷物を配達し、1回の電話に30秒〜1分間かかると計算すると、1日に電話だけで3時間話をしている計算だ。AI技術の活用によって、配達員の時間を短縮し、仕事の効率を高めることができるというのだ。

 アリババは現在、この技術が悪用されてロボットによる詐欺行為を防止するため、使用範囲を制限しているという。