【12月8日 AFP】中米エルサルバドルの雄大なチンチョンテペック(Chinchontepec)火山を見上げる首都サンサルバドル郊外の一本の道──しかし「悪魔の路地」と呼ばれるこの通りに並ぶのは、ギャング間の抗争で住民らが逃げ出してもぬけの殻となった家ばかり。今では熱帯植物がこうした家々をのみ込もうとしている。

 抗争は主に「マラ・サルバトルチャ(Mara SalvatruchaMS-13)」と「バリオ18(Barrio 18)」との間で起きている。その影響は地域一帯に及び、人々は身の安全のためにここを離れる。

 一部住民は、この危険なサンサルバドル郊外のソヤパンゴ(Soyapango)に残っているが、彼らは「悪魔の路地」から離れた場所の仮設の小屋で暮らすことを強いられている。

 重武装しながらも、2人だけで周辺を巡回していた警察官の一人は、「ギャングの構成員たちは、姿を見られるのを嫌がる」「だから住民が出ていくまで、嫌がらせをする」と、ここで起きていることを説明した。

 エルサルバドルは小さな国だが、人口620万人とその人口密度は高い。公式統計によると、そのうちの7万人が現地語で「マラス」と呼ばれるギャングの構成員だとされている。

 現地の人権NPO「クリストサル(Cristosal)」代表、ノア・ブロック(Noah Bullock)氏によると、ギャングが脅しを通じて人々を支配し、地域の行政当局のように振舞っているエリアもあるという。

 エルサルバドルでは、国民の33%が貧困生活を余儀なくされている。そのような厳しい環境のなか、ギャングの暴力によって住む家から追われた人は約23万人に上る。

「悪魔の路地」沿いの壁は、「マラス」の縄張りであることを示す落書きで埋め尽くされている。ギャングたちは警察から逃げるためにこの道を使う。殺されたメンバーを追悼する落書きは、一帯がバリオ18の支配下にあることを示しており、同時にそこに足を踏み入れる人への警告の役割も果たしている。