【11月18日 AFP】オーストラリア南東部メルボルン(Melbourne)で3人が死傷した刃物による襲撃事件で、刃物を振り回す男にショッピングカート(トロリー)で応戦し、世界的に注目され英雄視されていたホームレス男性が、以前に複数の軽犯罪法違反を犯していた疑いで逮捕された。男性は後に保釈が認められた。

 このホームレス男性マイケル・ロジャーズ(Michael Rogers)さん(46)は9日にメルボルン中心部で発生した襲撃事件で、刃物で無差別に周囲の人々を襲うソマリア出身のハッサン・カリフ・シャイア・アリ(Hassan Khalif Shire Ali)容疑者にショッピングカートをぶつけて襲撃を防ごうとする姿を捉えた動画がソーシャルメディアで拡散したことから、一躍有名人となった。シャイア・アリ容疑者は警察に銃撃され死亡している。

 ロジャーズさんは「トロリーマン」の異名で呼ばれるようになり、クラウドファンディングサイト「ゴー・ファンド・ミー(GoFundMe)」にはロジャーズさんを支援する募金を呼び掛けるページが開設され、14万5000豪ドル(約1200万円)が集まった。

 しかし数日後、警察は複数の軽犯罪法違反容疑でロジャーズさんを指名手配したと発表。自身が指名手配されたことをメディア報道で知ったロジャーズさんは16日夜、自ら警察に出頭し逮捕された。

 豪ABCによると、ロジャーズさんは17日にメルボルンの裁判所で開かれた保釈査問会に出廷。ロジャーズさんはメルボルン市内のカフェに侵入して500豪ドル(約4万1400円)を盗んだり、地元の集合住宅で自転車1台を盗んだりした窃盗や不法目的侵入など5件の罪で起訴されていたが、保釈が認められた。

 保釈査問会では、ロジャーズさんが長年にわたってホームレス生活や違法薬物に関わる問題を抱えていたことや、8月に禁錮5月の刑を終えて出所したばかりだったことが明らかになった。

 ロジャーズさんの公選弁護人で20年前からロジャーズさんを知るメリンダ・ウォーカー(Melinda Walker)氏はABCに、ロジャーズさんが警察に出頭したのは今回が初めてだと語った。「彼は社会から自分に差し伸べられた支援を受け入れることで、謙虚になったのです」

 ゴー・ファンド・ミーのロジャーズさんへの募金を呼び掛けるページによると、寄せられた14万5000豪ドルは、ロジャーズさんがこれからの人生を歩んでいく際に経済面などで確実に支援していけるよう信託基金として管理するという。(c)AFP