【12月2日 AFP】自然災害の多いバングラデシュの地方の村では、突然の洪水で孤立し、子どもたちが学校に通えなくなってしまうことがしばしばある。このため、モサマット・レカー(Mosammat Rekha)さん(7)のいとこたちは、読み書きができないまま大人になった。

 だが、教室と遊具を備えた船の学校が登場し、子どもたちは洪水でも勉強を続けられるようになった。レカーさんもこの船の学校で学ぶ子どもの一人だ。「自宅がどうにか洪水を免れているような雨期でも、学校に行ける」と、レカーさんは船上でAFPに語った。レカーさんの学校は、首都ダッカの北西約175キロに位置するチャランビール(Chalan Beel)に浮かんでいる。

 人口過密と貧困にあえぐバングラデシュは、既に全土が気候変動による被害を受けている。国連(UN)は同国を、地球温暖化による影響が最も大きい国の一つとしている。

 壊滅的な被害をもたらす嵐やサイクロンが多発する同国では、河川の氾濫、海面上昇、異常気象の問題に数百万人が直面している。

 ノーベル賞を受賞した国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、バングラデシュでは21世紀末までに、約2000万人が「気候変動難民」となる可能性があると警鐘を鳴らす。人々は河川の氾濫や海面上昇の影響で家を追われる恐れがあるという。

 船の学校は、パドマ(Padma)川流域にあるカリダスカリ(Kalidaskhali)のような村々に広がり、人々の生活に変化をもたらしている。

 地元政府のアジズル・アザム(Azizul Azam)氏によると、この地域の洪水は、あらゆるものをのみ込み、高さ5メートルほどの土手をわずか1日で水没させてしまうほど激しいものだという。

 ガンジス(Gangas)川の支流であるパドマ川は、徐々に内陸部を侵食し、その影響で家を追われた人の数はわずか5年で9000人を超えている。

 IPCCの委員の一人、アティック・ラーマン(Atiq Rahman)氏は、河川による浸食は、デルタ地帯に位置するバングラデシュではずっと前から見られる現象だが、気候変動により近年は加速していると指摘する。