【11月3日 AFP】米東部ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)のシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)で10月27日に発生し、11人の犠牲者を出した銃乱射事件をきっかけに、米社会における人種差別主義、ネオナチ、反ユダヤ主義に注意の目が向けられている。また、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の存在が、このような事件の引き金になっているとの意見をめぐっても激しい議論が巻き起こっている。

■米極右とは?

 極右やネオナチは米社会に長年存在しているが、文化の主流からは常に外れた存在だった。

 しかし、2001年9月11日の米同時多発攻撃で反イスラム主義が盛り上がったのをきっかけに、極右勢力は力を増した。そして、2010年に白人至上主義者で右派勢力のリチャード・スペンサー(Richard Spencer)氏がウェブサイト「オルタナティブライト(AlternativeRight)」を立ち上げると、その勢いはさらに強まった。

 新極右勢力「オルト・ライト(オルタナ右翼)」が掲げるのは主に、白人至上主義と男性優位の考えだ。移民による人種的・文化的脅威を訴え、真のナショナリズムの確立を呼びかける。反ユダヤ主義者でもあるスペンサー氏は、欧州系米国人の地位とアイデンティティー、そして未来に対して、自身が多大な貢献をしていると喧伝しており、こうした同氏の活動が、ネオナチにこれまで以上の正当性を与えることとなった。

 極右勢力は主要メディアから締め出されていたため、彼らは、その理念を検閲しないウェブサイトやソーシャルメディアに集まり、コミュニティーを形成していった。利用したのは、ネット掲示板「4chan」、ソーシャルニュースサイト「レディット(Reddit)」、ソーシャルメディア「Gab(ギャブ)」などだ。

 トランプ氏の元側近で首席戦略官・上級顧問を努めたスティーブ・バノン(Steve Bannon)氏は政権に入る前、超保守系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース(Breitbart News)」のトップを務めていた。同氏の下でブライトバートは、極右に関するすべてを発信するハブと化し、オルト・ライトは急激に注目を集める存在となっていった。