【10月10日 AFP】巨大なマカジキに船を沈められたフィリピン人漁師5人が、その場しのぎで造ったいかだで数日間漂流するという、米文豪アーネスト・ヘミングウェー(Ernest Hemingway)の「老人と海(The Old Man and the Sea)」を連想させる出来事があった。

 漁船の船長が10日、AFPに語ったところによると、南シナ海(South China Sea)で先週、5人が漁をしていたところ、全長1.8メートルのマカジキがその大きな上顎で長さ12メートルの木造漁船に穴を開けたという。

 3日夕方には船が沈み、漁師たちは水や食料がほとんどない状態だったが、8日になってようやく米海軍に救助された。

 2児の父親である船長は「(マカジキが)船の底に当たり、大きな穴が2つ開いた。マカジキは小魚を追いかけていたんだと思う。沈んでいく船の周りをしばらく泳いでいて、方向感覚を失っていたようだった」と振り返った。

 漁師たちは浮材や厚板、たるを船体から取り外し、その場しのぎのいかだを造った。

「2日後には水が尽きた。通り過ぎる商船に手を振ったが、誰も助けに来なかった。だが私たちは希望を失わなかった」と船長は説明。漁師たちは生米を食べたり海水を飲んだりしていたという。

「救助された時、涙がこぼれた」と語る船長は、首都マニラから北西に約80キロ離れた港湾都市スービック(Subic)で家族と再会を果たした。

 救出した米海軍は、特に漁師たちが海水を飲んでいたことを考えると、生き残ったのは運が良かったと話している。

 九死に一生を得た経験だったにもかかわらず、新しい船が見つかったなら、船長と乗組員らは数日間休んだ後に海へ戻るつもりだという。

 船長は「これがわれわれの仕事だから」と付け加えた。(c)AFP/Cecil MORELLA