【10月7日 AFP】先月28日にマグニチュード(M)7.5の地震と津波に襲われたインドネシアのスラウェシ(Sulawesi)島。発生から1週間以上が経過し、死者は1600人を超えた。

 被災地の沿岸都市パル(Palu)に住むディナル(Dinar)さん(38)は、自宅は跡形もなくなったものの幸い命は助かった。しかし臨月を迎えていた妊婦だったため、自身の幸運をかみしめる間もなく、壊滅状態にある被災地での出産という現実に直面。市内の損壊した医療機関は負傷者であふれ、医師たちはがれきが散乱し、地割れした路上で負傷者の治療を行うという状況だった。「地震の後はとても不安でした。頭の中は心配事でいっぱいだった」とディナルさんはAFPに語った。

 しかし荒廃したパル市の港に奇跡が訪れた。最高レベルの診療設備を持つインドネシア海軍の艦船「ドクター・スハルソ(Dr Soeharso)」号が寄港したのだ。ディナールさんはすぐさまスハルソ号に乗船。地震と津波から1週間後、無事に第5子となる女児を出産し、出産場所となった艦船名「スハルソ」の女性形「スハルシ(Suharsi)」と名付けた。

 スハルソ号は、国際通貨基金(IMF)と世界銀行(World Bank)の年次総会が来週開幕するのに合わせて開催地のバリ(Bali)島に停泊していたが、地震と津波がパルを襲い、複数の集落が消滅し、医師や医療品不足が深刻な状況を受けて、現地に向かうことを決めた。産科医を募る緊急の呼び掛けにパルの地元医師が応じて乗船し、地震発生からこれまでにディナルさんの娘を含めて4人の赤ちゃんがスハルソ号の船上で誕生した。

(c)AFP / Adek BERRY