【10月2日 AFP】欧州最高峰の物理学研究所、欧州合同原子核研究機構(CERN)は1日、「物理学を構築したのは男性」といった内容の講演を行った研究員に対し、活動停止の処分を科したことを明らかにした。この研究員は講演の中で、適切な資格なしに専門職を要求するとして女性を非難していた。

 イタリア・ピサ大学(University of Pisa)のアレッサンドロ・ストルミア(Alessandro Strumia)氏による問題の講演は、スイス・ジュネーブ(Geneva)にあるCERNで、9月28日に開かれた「高エネルギー理論とジェンダーとの関係」に関するワークショップで行われたものだった。

 スライドや表、グラフを数多く盛り込んだ講演は、物理学の分野において、男性が差別に直面しているとの主張を展開する内容だったとみられる。

 あるスライドでは、ジェンダースタディーを受講するために列を成す女性らが、その後に、科学・技術・工学・数学(STEM)分野でのポスト不足をめぐって抗議する様子が示されていた。

 また別のスライドには「物理学を発明、構築したのは男性」と記され、さらに、招待されてできるようなものではないといった意味のメッセージも添えられていた。

 CERNは声明文を発表し、「高エネルギー理論とジェンダーに関するワークショップで招聘(しょうへい)研究員が行ったこの講演を極めて侮辱的とみている」としながら、「個人に対する攻撃や侮蔑的言動を容認しないという研究所の行動規範に従い、講演のスライドをオンライン書庫から削除する」ことを決定したと述べた。

 また、追加の声明文では、「先週の出来事に関する調査の結果が出るまで、CERNでの活動を停止する処分を研究員に科し、この処分を直ちに適用した」ことも明らかにしている。

 CERNは、ストルミア氏の講演がワークショップで行われた38の講演のうちの一つであることを指摘し、その侮蔑的な講演内容が「今回のイベントの重要なメッセージと成果に暗い影を落とす恐れがある」と注意を促した。

 現在、CERNを率いているのは、同施設としては初めての女性所長であるファビオラ・ジャノッティ(Fabiola Gianotti)氏だ。実験素粒子物理学のイタリア人専門家のジャノッティ氏は2016年、所長に就任した。

 CERNによると、研究所内のジェンダーギャップ(男女格差)を埋める取り組みにもかかわらず、女性職員の割合は依然として全体の20%未満にとどまっているという。

 ただ、科学技術分野に進出する女性の後押しを目的とする活動は支援しているとしながら、「多様性は研究所における強固な現実であるとともに、その行動規範に根拠を与える中心的価値観の一つとなっている」と述べ、また「あらゆるレベルでの多様性と平等性の促進に、組織として全力で取り組んでいる」ことを強調した。(c)AFP