【10月1日 AFP】大地震と津波に見舞われたインドネシア・スラウェシ(Sulawesi)島の空港で、航空管制官(21)が揺れが続く中でも現場を離れるのを拒み、旅客機を無事に離陸させた。管制官はその後で脱出を試みたものの、重傷を負って亡くなった。国内では、命をかけて職務を全うした管制官を「英雄」とたたえる声が相次いでいる。

 この管制官はアントニウス・グナワン・アグン(Anthonius Gunawan Agung)さん。9月28日にスラウェシ島が断続的に地震に襲われた時、中部の都市パル(Palu)の空港の航空管制塔で勤務中だった。

 インドネシア管制会社(AirNav Indonesia)によると、アグンさんは管制に当たっていた地元バティック・エア(Batik Air)機が離陸するまで、担当外の同僚たちが避難していく中でもその場を離れようとしなかった。

「地震が起きたとき、彼はバティック・エア機に離陸許可を出すところだった。そして、同機が安全に離陸するのを待って、ようやく管制塔を離れ始めた」(管制会社の広報担当者)

 バティック・エア機が無事離陸した後、地震はますます強くなっていき、そしてマグニチュード(M)7.5の大地震と津波が襲った。9月30日までに少なくとも832人の死者が確認されている。

 アグンさんは、倒壊しかけた4階建ての管制塔から必死に脱出しようと、最終的に最上部から飛び降りたが、その際に脚を骨折し、内臓に重傷を負った。近くの病院に搬送され、応急処置を受けたものの、設備の整った病院に移送するヘリコプターが到着する前に亡くなったという。

 管制会社は、アグンさんの並外れた献身をたたえ、殉職後に2階級特進させた。

 地元テレビ局「メトロTV(Metro TV)」などがアグンさんの「英雄的な行動」を称賛している。(c)AFP