【9月27日 AFP】世界で最も貴重で、生物多様性に富む生態系の一つである湿地が、都市化や農地化が進む中、危機的速さで消滅している。湿地の保全を目的としたラムサール条約(Ramsar Convention)の事務局が27日、報告書を発表し、侵食を食い止めるための迅速な対応を呼び掛けた。

 ラムサール条約は半世紀近く前、イランの都市ラムサールで締結された。同条約の事務局が、世界の湿地の現状に関する報告書を発表するのは初めて。

 マーサ・ロハス・ウレゴ(Martha Rojas Urrego)事務局長は、スイス・ジュネーブで記者会見し、「われわれは危機的状況にある」「森林の3倍の速さで湿地が失われている」と述べ、湿地の消滅により、気候変動など壊滅的影響を受ける恐れがあると警告した。

 全88ページに上る同報告書によると、1970年から2015年までに、湿地の約35%が消滅。湿地には、湖や川、沼地、泥炭地に加え、ラグーン(潟)やマングローブ、サンゴ礁などの沿岸地帯や海洋区域も含まれる。

 湿地は今日、1200万平方キロメートル以上を占めているが、消滅速度は2000年以降加速していると、報告書は指摘している。

 湿地は、世界で消費される真水のほぼすべてを直接的あるいは間接的に供給しており、また、動植物の種全体の40%以上は湿地で生息したり繁殖したりしている。湿地原産の動物や植物は、とりわけ生存が危ぶまれており、4分の1は絶滅の危機に直面しているとされる。

 報告書は、国を挙げての持続可能な保全計画など、湿地を有効的に管理するためのさらなる努力の必要性を強調している。(c)AFP/Nina LARSON