【9月5日 AFP】米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)、サンフランシスコ・フォーティナイナーズ(San Francisco 49ers)の元QBコリン・キャパニック(Colin Kaepernick)が、米スポーツ用品大手ナイキ(Nike)の新広告キャンペーンに起用されたことが3日に明らかになった。

 2016年、人種差別に抗議するために試合前の国歌演奏時に膝をつき、政治的な論争を引き起こしたキャパニックはNFLでのプレーから遠ざかっており、現在は自身の抗議行動を理由に各チームのオーナーによってリーグから締め出されているとして、NFLに苦情を訴えている。

 NFLの新シーズンが開幕する数日前に公開されたナイキの新しい広告は、同社の象徴的スローガンである「Just Do It」の誕生30周年を記念するもので、キャパニックのポートレートの上に「何かを信じろ。たとえすべてを犠牲にしなくてはならなくても」と記されている。

 キャパニック本人も「#JustDoIt」のハッシュタグを添えて自身のツイッター(Twitter)に広告を投稿。米スポーツ専門チャンネルESPNによれば、ナイキは2011年にスポンサー契約を結んだキャパニックに対し、抗議活動により論争を呼んでいたこの2年間も契約料を支払っていたという。

 ナイキの北米ブランドを担当するジノ・フィザノッティ(Gino Fisanotti)副社長は「われわれは、コリンがこの時代において最も人々の心を揺さぶるアスリートの一人だと信じており、彼は世界を前進させるためにスポーツの力を使ってきた存在だ」とコメントしている。

 キャパニックの膝つき抗議は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領や他の保守派から激しく非難されており、この広告はすぐさまナイキに対する不買運動を引き起こした。

 ナイキの株価は4日、前日から3.2パーセント安の79ドル60セント(約8900円)にまで落ちたが、同社の今回の動きは代表的な反トランプ勢力として知られるジョン・ブレナン(John Brennan)元中央情報局(CIA)長官やスポーツジャーナリストのジメール・ヒル(Jemele Hill)氏ら、一部の著名人から称賛の声も上がっている。

 バージニア・コモンウェルス大学(Virginia Commonwealth University)のケリー・オキーフ(Kelly O'Keefe)教授は、キャパニックを広告塔に選んだことでナイキは少しの顧客を失うかもしれないが、その一方で非白人やミレニアル世代といった層との関係を強化するかもしれないと説明した。

 教授は電話での取材に対し、「現在すでにボイコットが行われているという点で、それは危険な動きではあるが、ナイキの件に関していえば、不買運動をする人のほとんどが同社の中心的顧客である可能性は低いと私は考えている」と話した。

「彼らにとって中心となる顧客は今回のキャンペーンを支持しようとするだけでなく、むしろこうした立場を明確にしたブランドに夢中になっていると考えている」 (c)AFP/Rob Woollard