【9月9日 AFP】見捨てられた町がゆっくりと死に逝く状況を見るのにうんざりし、スペイン人のアーティスト、エドゥアルド・ヘルミダ(Eduardo Hermida)さんは自分のスタジオから出て、ディエゴ・ベラスケス(Diego Velazquez)の傑作「ラス・メニーナス(Las Meninas)」(女官たち)からインスピレーションを得た絵を壁に描いた。2008年のことだった。

 それは、当局のなんらかの行動を求める自然発生的な抗議だった。スペインのガリシア州フェロル(Ferrol)の北西に位置する工業都市カニド(Canido)は、減少する人口と廃虚となった家々からスペインのデトロイトと呼ばれている。

 友人たちがヘルミダさんに加わった。数年たつと遠くは台湾など海外からもアーティストが集まるようになった。気づけばヘルミダさんが始めた活動は、毎年恒例の都市型芸術祭「メニーナス・デ・カニド(Meninas de Canido)」となり、町に命を吹き込み、観光客や新しい住民を引き寄せていた。

 フェロルは独裁政権を敷いた故フランシスコ・フランコ(Francisco Franco)総統の出生の地としても知られている。ガリシア州の統計によると、1981年以来これまでに2万人以上の住民が流出した。

 だが、10年をかけ徐々に町が変わり始めている。フェスティバルのおかげだと地元の住民は言う。多くが荒廃しているものの平屋の家々は残っている上、新しい家も建てられ始めた。人気のスーパーマーケットも開店した。

 地元の都市計画機関に務めるマリア・フェルナンデス・レモス(Maria Fernandez Lemos)さん(46)は、メニーナスのフェスティバルと結束の強いコミュニティーのおかげで、何もなかった町が誇りを取り戻したと述べ、「フェスティバルの影響は大きい」と、指摘した。(c)AFP/ Marianne BARRIAUX