「記憶に留めておく一枚の報道写真」

難民キャンプで三輪車に乗る子供、彼は今世紀最大の人道危機とされるシリア内戦の被害者である。内戦により避難を余儀なくされた彼らは難民キャンプでの生活を強いられる。長期化が予想され、彼がいつまでここで生活するのかわからない。今、もしくは彼が成長してから「なんで自分はここにいるの?」と聞いてきたらなんと答えたらいいのだろうか。「爆弾から逃げてきた。」「紛争が終わらないから」と答えるのか、きっと彼を納得させることができる人はいないだろう。自分たち大人がすべきことはむなしく事実を言い聞かせることや同情することではない。これ以上彼らの未来を奪わないようにすること、失ったものを他のことで補えるよう努力することである。それが彼らへのせめてもの罪滅ぼしである。


成蹊大学 土屋敦規 難民セクション

■難民セクション 部門賞
[講評]野末俊比古(青山学院大学教育人間科学部教授)

三輪車の子どもから背景に目をやると、そこは街中や公園などではありません。文章によってシリア内戦で生じた難民キャンプであることがわかります。子どもに何を語れるのかを自問する文章は、読み手にも自問を迫るものとなっています。遠い国の問題ではなく自身の問題であるという意識がタイトルからも伝わってきます。