【8月24日 AFP】目の検査の技術向上により、アルツハイマー病の症状が現れるかなり前に医師らが患者に診断を下すことが可能になる日が来る可能性があるとの研究論文が23日、米国医師会(AMA)発行の医学誌「JAMA眼科学(JAMA Ophthalmology)」に発表された。

 論文によると、研究チームは大半の眼科医院ですでに利用されているのと同類の検査機器を用いて、調査参加者が30人の小規模なサンプル集団でアルツハイマー病の兆候を検出したという。

 研究では、年齢が70歳代半ばでアルツハイマー病の表だった症状がみられないこの30人に、PET検査や髄液抽出などの検査を受けさせた。

 検査の結果、アルツハイマー病に関連するタンパク質のアミロイドやタウの濃度上昇が、参加者全体の約半数で確認された。これは、このグループの人々がゆくゆくは認知症を発症すると考えられることを示唆している。

 さらに、研究チームはこのグループで網膜の薄化がみられることを発見した。この薄化は、専門家らが過去に実施した、アルツハイマー病で死亡した患者の病理解剖ですでに確認されていた。

 研究責任者の一人で、米ワシントン大学(Washington University)のラジェンドラ・アプテ(Rajendra Apte)教授(眼科学・視覚科学)は「アミロイドやタウの濃度上昇がみられる患者グループで、網膜の中心部に顕著な薄化を検出した」と説明する。

「人間は皆、血管のない小領域が網膜の中心部に存在する。この部位は最も正確な視覚に関与している。今回の研究では、前臨床期アルツハイマー病の人々でこの血管のない部位が有意に拡大していることを発見した」

 だが、網膜の薄化がみられる参加者がアルツハイマー病の発症へと進行したかどうかについては、今回の研究では明らかにされなかった。

 英研究機関「アルツハイマー・リサーチUK(Alzheimer's Research UK)」のサラ・イマリシオ(Sara Imarisio)氏は「今回の研究で用いられた目の検査法は、比較的手早く実行でき、安価で、体に負担がかからない」と指摘した。