「記憶に留めておく一枚の報道写真」

1986年4月26日、ウクライナにあるチェルノブイリ原子力発電所で爆発事故が起きた。これは、世界最大の原発事故の一つである。この写真はチェルノブイリ原子力発電所の近くの村にある幼稚園だ。ここも原発の被害を受けており、事故が起きてから32年たった今でも未だに立ち入り禁止区域となっている。この区域は放射性物質に汚染され、ゴーストヴィレッジなどと言われている。園内の様子からは、原発の被害の大きさがうかがえる。この人形は、事故が起きてから今日に至るまで悲しい現実を目にしてきたのか、人形の目は見捨てられた悲しみや失望感に溢れている。原発事故の記憶は決して忘れ去られてはいけない。このような災害を繰り返さないためにも、現状を知り、今生きている人間が事故について後世に語り継いでいくべきだ。そして、見捨てたりあきらめたりせず一つ一つの問題と丁寧に向き合っていく必要がある。

東洋英和女学院大学 加山瑶子 資源環境セクション

■資源環境セクション 部門賞

[講評] 野末俊比古(青山学院大学教育人間科学部教授)
長く使われていない施設の内部──文章から明らかにされるのは、それがチェルノブイリの原発近くにある、いまだ立入禁止の幼稚園であるという事実です。ベッドの上の人形は、ずっとそこで何を思っていたのか──見た者に考えさせる一枚です。静かに訴えかけてくる写真を選ぶことで、資源・環境問題の重さを感じさせることに成功しています。