【8月8日 AFP】野生の状態で捕獲され、ミャンマーの林業で木材を運搬するために強制的に集められたアジアゾウ(学名:Elephas maximus)は、飼育下で生まれた使役ゾウに比べて平均寿命が5年短いとの研究論文が7日、発表された。

 大型哺乳類のゾウは捕獲された時点の年齢が高いほど、早死にする可能性が高いことが、1951年~2000年に記録されたゾウ5150頭分の政府機関データの分析で明らかになった。このうち全体の5分の2は、捕獲され飼育下に置かれたゾウで、もともとは野生の個体だった。

 飼育下で生まれた使役ゾウの雄と雌の寿命の中央値はそれぞれ30年と45年だったが、これに比べて野生で捕獲されたゾウの雄と雌は、寿命の中央値がどちらも5年ずつ短かった。

 捕獲時に麻酔薬を打たれたり、投げ縄で取り押さえられたりした際のトラウマや、命令に従うように動物を「調教する」荒々しいやり方、家族との別れ、これらの要因すべてが寿命の短縮をもたらしている可能性が高いと、研究チームは推測している。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された論文の主執筆者で、フィンランド・トゥルク大学(University of Turku)のミルッカ・ラハデンペラ(Mirkka Lahdenpera)教授は、AFPの取材に「ゾウは、飼育下での新生活から生じる長期のストレスとそこに至るまでの経験から影響を受けている」と指摘する。

 アフリカゾウとアジアゾウはどちらも高度に社会的な動物であることが、過去の研究で明らかになっていた。例えば、母親から引き離された子ゾウは後々まで引きずる心的外傷を負う恐れがある。

 実際に、タイの観光業者やミャンマーの木材産業業者にゾウを販売している密売人らは通常、母親からまだ授乳を受けている5歳未満の子ゾウの捕獲は避ける。

 現在、ミャンマーでは約5000頭の成獣のゾウが長時間の重労働に従事している。大半のゾウは伐採されたばかりの木の幹を、密生したジャングルを通って輸送拠点や加工工場まで運んでいる。