【7月31日 AFP】2014年3月に乗客乗員239人を乗せたマレーシア航空(Malaysia Airlines)MH370便がクアラルンプール(Kuala Lumpur)から中国の北京(Beijing)に向けて飛行中に消息を絶った事件は、航空史における最大の謎の一つとなっている。だが、事件の調査チームがようやく30日に発表した報告書は何ら新味のない内容だったことから、遺族らは怒りや失望を募らせている。

 長らく発表が待ち望まれていた報告書の中で、調査チームは航空管制官の過失を指摘。さらに、MH370便の進路変更は手動で行われており、操縦士でない第三者が進路を変えた可能性を排除した。だが、同機の機体がいまだ見つからない中で何らかの結論が示されることを望んでいた遺族たちに、報告書は確固たる事実を全く提供できていなかった。

 400ページにもおよぶ報告書は大半が技術的な詳細にさかれ、機体の残骸やブラックボックスが発見されていないことで調査が行き詰まったとして「MH370便が消息を絶った原因は特定できない」と結論づけた。

 報告書によれば、MH370便の当時の飛行状態は良好で操縦士らの健康状態にも問題はなかった。また、同機が飛行中にハイジャックされたために遠隔操作での操縦が試みられたとの説については、そうした事実はないと否定した。

 遺族の一人によると、運輸省で行われた遺族らへの説明会は報告書に何ら新事実がないことに怒りを募らせた遺族らによる「ののしり合い」の場と化したという。

■不明機捜索は失敗に

 消息を絶ったMH370便をめぐっては、オーストラリアの主導で12万平方キロメートルの海域で捜索が行われるなど、史上最大規模の捜索活動となったが機体は発見できず、昨年1月に捜索は打ち切られた。

 しかしマレーシア政府は今年1月、遺族からの強い要請を受けて海底探査を行う米企業オーシャン・インフィニティー(Ocean Infinity)と「発見できなければ報酬なし」との条件で機体もしくはブラックボックスの捜索再開契約を締結。だが、世界最高レベルのハイテク捜索装置を駆使して海底を捜しても何も見つからず、捜索は失敗に終わった。

 これまでにMH370便の一部と断定された残骸はインド洋西部の海岸で見つかった3個の破片のみ。うち一つは全長2メートルのフラッペロンと呼ばれる翼の一部だった。

 マレーシアで5月に発足したマハティール・モハマド(Mahathir Mohamad)首相率いる新政府は、新たな証拠が発見された場合に限るとの条件付きで捜索再開もあり得るとしている。

(c)AFP/M. Jegathesan