【7月26日 AFP】後天性免疫不全症候群(AIDS、エイズ)の専門家らは25日、他人をHIV(ヒト免疫不全ウイルス)にさらした罪でHIV感染者を刑事施設に収容できるとする法律を廃止するよう、関係各国に対して呼びかけた。こうした法律の運用は「非科学的」で、HIVのまん延をさらに悪化させていると主張した。

 オランダの首都アムステルダム(Amsterdam)で開催の第22回国際エイズ会議(International AIDS Conference)で発表された「合意声明」によると、少なくとも世界68か国に「HIVへの感染を隠す」、「HIVにさらす」、「HIVに感染させる」などの行為を犯罪とみなす法律があるという。文書の筆者として専門家ら約20人が名を連ねた。

 国際エイズ学会(IAS)発行の学術誌にも同時に掲載されたこの文書には、HIVの共同発見者のフランソワーズ・バレシヌシ(Francoise Barre-Sinoussi)氏やIASのリンダゲイル・ベッカー(Linda-Gail Bekker)理事長などが署名した。

 ベッカー理事長は、アムステルダムで記者団に「これらの法律は効果がなく、正当な根拠のないものだ」と語った。

「検討が不十分なまま適用されているこれらの法律については、HIV感染を減らしたり誰かを保護したりするものではなく、逆に人々を情報やサービスから遠ざけ、隠匿へと追いやることで、まん延を悪化させているものと考えることができる」

 文書は、HIVがどのような仕組みで感染する、またはしない可能性があるのか、最新の科学的証拠をもって総括的に提示することを目的としたもので、他人をHIVにさらす罪で人々を刑事施設に収容することを、科学的見地から推奨することはできないと結論づけている。