【7月28日 AFP】国際サッカーの祭典、W杯ロシア大会(2018 World Cup)で使用されたスタジアムの今後の有効活用は、大会の成否を測る基準の一つになる。そのことを分かっているウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は、スタジアムが悲惨な運命をたどらないようにすることに執念を燃やしている。

 ロシアは、W杯に向けたスタジアムの建設と改修に最低40億ドル(約4500億円)を費やしたといわれている。W杯の試合を開催するために、ニジニーノブゴロド(Nizhny Novgorod)のようなモスクワから離れた都市、あるいはサランスク(Saransk)のような小さな町にも、驚くようなスタジアムが鎮座するようになった。

 プーチン大統領はW杯開幕の1週間前、電話討論型のテレビ番組に出演。途中までは当たり障りのない内容だったが、スタジアムの今後に話が及ぶと大統領の様子が一変。20年近くにわたってロシアを支配してきた絶対的な指導者は、突如としてW杯後の活用の重要性を力説し始めた。

「諸君ら各地の同胞たちには対処をお願いしたい。何があっても、開催地を1990年代中盤のマーケットのようにしてはならない」。プーチン大統領が感情的ともいえる真剣な口調でそう話すと、画面の向こうにいる地方自治体の首長たちは凍りついたようになった。

 国立競技場でもあるモスクワのルジニキ・スタジアム(Luzhniki Stadium)は、おそらく安泰とみられる。しかし、サランスクやサマラ(Samara)のスタジアムが自給自足型のモデルを確立するのは容易ではない。このスタジアムを本拠地とするチームの中には、普段は数千人のファンしか集めることができないところも多いのだ。

 プーチン大統領は、W杯という複雑なイベントを開催する能力がロシアにあることを示そうと、莫大(ばくだい)な資金を投じた。しかし各地のスタジアムが1990年代のルジニキ・スタジアムの二の舞になれば、地方自治体には各種の費用が重くのしかかる。そして、今大会がロシア全土に広がる11の都市で開催されたことを考えると、スタジアムの大半は、少なくともしばらくは厳しい運営を強いられるとみられる。