【7月14日 AFP】フランス・パリ北郊のボンディ(Bondy)の公営住宅で暮らすアダマ・ワグイさん(16)は、地元サッカーチームで獲得した数多くのトロフィーを自慢げに掲げ、「2016年AS ボンディ最優秀ゴールキーパー賞、ビシー(Vichy)U17トーナメント最優秀ゴールキーパー賞」と、それぞれに刻まれた文字を読み上げた。優勝トロフィーは両親のベッド脇のテーブルの上に並べられていた。

 だが、ワグイさんにとっての最大の栄光は、地元出身の神童で、今回のW杯フランス代表チームでも大注目となっているキリアン・エムバペ(Kylian Mbappe)選手と対峙したことだろう。「難しかった」と、はにかみつつも、「でも、うまく止めた時もあった」とその時のことを話した。

「レ・ブルー(Les Bleus、フランス代表チームの愛称)」が、1998年の勝利から20年ぶりに母国にW杯を持ち帰る期待が高まるなか、今年の代表チームの躍進は、選ばれた選手の多くが技を磨いたこの貧困地域にとって大きな誇りとなっている。

 今年のフランス代表チームの選手23人のうち、約3分の2がアラブ系またはアフリカ系だ。これは1998年大会で優勝した「Black-Blanc-Beur(黒人・白人・アラブ系)」として知られる当時のチームを思い起こさせるものだ。

 AFPの取材に応じた、ボンディの地元チーム「ASボンディ」のコーチ、アントニオ・リカルディ氏は、若き日のエムバペ選手には当時から突出した才能があったと話し、ディエゴ・マラドーナ(Diego Maradona)のようにディフェンダーを5人抜いてゴールネットを揺らしたこともあったと述べた。

 同氏は、「最高の選手たちがこの地域から出てくるのは、こうした少年たちが常にボールを蹴っているからだ」と述べ、「それが学校だろうが、どこだろうが、彼らはサッカーのために生きている」と続けた。