【7月10日 AFP】フィリピンで9日、連邦制移行を目指す新憲法草案がロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領(73)に提出された。

 現行憲法の下でドゥテルテ氏は6年の任期が満了する2022年に大統領を退任しなければならず再選も禁止されているが、新憲法草案で大統領任期は1期4年で2期までとされており、仮に草案の内容で改憲が実現すればドゥテルテ大統領は最大で8年の任期延長が可能になる。

 憲法を改正するのは議会での審議や国民投票などの過程を経なければならない。1200人を対象とした直近の世論調査によれば、改憲賛成は37%、反対は29%となっている。

 草案は連邦制を導入して国内を18地方に分割し、各地方の自治権を強化するとしている。ドゥテルテ氏は新憲法について、首都マニラのエリートに集中している権限を分散できるほか、自治を要求して戦闘を続けている武装勢力との和平合意にも有益だと説明している。

 しかしドゥテルテ氏に懐疑的な人々は、ドゥテルテ氏の目的は、長期独裁を敷いたフェルディナンド・マルコス(Ferdinand Marcos)元大統領の失脚後に制定された現憲法の制限を超えて大統領にとどまることが狙いではないかとみている。一方のドゥテルテ氏は先週、2022年の任期満了後に再選を目指す意志はないと述べている。

 現行憲法は大統領が戒厳令を布告できる根拠を侵略と反乱に限定しているが、新憲法草案は「不法暴力行為」でも戒厳令布告が可能としている。フィリピンではマルコス大統領時代に戒厳令下でマルコス氏の政敵が大量に投獄されたり、治安部隊が市民を殺害したりした暗い過去がある。

 アテネオ・デ・マニラ大学 (Ateneo de Manila University)政治学大学院長のロナルド・メンドーサ(Ronald Mendoza)氏は、現在の政治状況からすると改憲の実現は難しいとだろうと述べた。(c)AFP